シリコンを「球状」に加工

 どうすれば従来の太陽電池にない、柔軟性を獲得できるのか。産学官連携の技術支援を手掛ける福井県工業技術センターが、一つの答えを見いだした。シリコン製の太陽電池を糸状に加工した「太陽光発電糸」だ。

 上の写真は太陽光発電糸を横糸に、汎用の繊維を縦糸にして織り上げた生地だ。自由自在に折り曲げられるのが特徴だ。

 太陽光発電糸の要となるのが、スフェラーパワー(京都市)が開発した直径1.2mmの「球状太陽電池」だ。シリコンを平面ではなく球状に加工することで、様々な方向からの光を受けて発電できるようにした。

 この球状太陽電池を、2本の導電線で挟み込む。導電線はロープなどに使う有機繊維を芯糸とし、そこにスズでメッキした糸を2本巻き付けたもの。金属繊維と同等の導電性を持ちつつ、布として加工できる屈曲性と伸張性を保てるという。導電線に、球状太陽電池を一つひとつ数mm間隔ではんだ付けしていく。球状太陽電池の片方がプラス極、もう一方はマイナス極となる。

 生地に織り込んだあと、防水・耐久性向上のために、フッ素やポリウレタンなどでコーティングを施す。出来上がった太陽光発電糸は、糸というよりはビーズをつなげたアクセサリーのように見える。

小さな球状太陽電池を糸に
●太陽光発電糸の仕組み
シリコン製の「球状太陽電池」を使い、発電できる糸を製造する。上下にプラス・マイナス極を持つ太陽電池を2本の導電線で挟み込む。球状のため反射光も取り込める

 糸状に加工することで、様々な用途が広がる。多くの繊維メーカーは衣服単体で心拍数などを測定できる「スマート衣料」の開発を進めているが、電源の確保が課題だった。太陽光発電糸を衣服の生地に織り込めば、その問題は解決に近づく。IoT(モノのインターネット)で利用するセンサーなどの電源としても活躍しそうだ。

アシックスと共同開発したシューズは、つま先が光る仕組み(写真=スタジオキャスパー)

 アシックスとはシューズを共同開発した。太陽光発電糸を側面に縫い込み、つま先とかかとから光を発する靴を開発した。福井県工業技術センター新産業創出研究部の増田敦士氏は「災害時の寝袋や毛布などに縫い込んでおけば、発電した電気で携帯電話を充電できるようになる」と話す。

 発電量は生地にどれだけの密度で糸を織り込むかで決まる。現時点では、一般的な太陽光パネルと比べて、4分の1程度の効率で発電できるという。

 福井県工業技術センターでは太陽光発電糸のみならず、生地加工の技術開発も手掛けている。1m幅の生地を自動で製織できる、特殊な織機を開発した。繊維産業が集積する北陸地域で培われた技術が生きた。同センターの増田氏は「アパレルメーカーなどと共同で用途開発を進め、早期に量産体制を確立したい」という。

 シリコンを使わず、本物の繊維に近い形状を保った太陽電池を開発するメーカーもある。カーペットやカーテン製造などを手掛ける住江織物だ。東京工業大学や信州大学と共同研究を進め、2016年3月に「太陽光発電繊維」を開発したと発表した。