過去の合否判定から学習

 ここに商機を見いだしたのがNECだ。同社のAIシステム「RAPID機械学習」を基に、独自の人材マッチングシステムを2015年12月に構築した。

 多くの企業は書類選考後に面接を複数回実施して、採用候補となる学生を絞り込む。RAPIDを使う狙いは、このプロセスを簡略化すること。AIが面接官の代わりとなることで、膨大な志願者の中から、自社に最適な人材を高精度で抽出できるという。

 カギを握るのがRAPIDの機械学習機能だ。まずは企業の人事担当者が約2000人分の履歴書データと、採用試験の合否判定結果を人材マッチングシステムに入力する。するとAIが企業ごとの採用基準を学習。履歴書の文面などから、AIが自動的に適切な人材を選抜できるようになる。

 NECクラウドプラットフォーム事業部の上保正之シニアマネージャーは「AIは過去の合否情報を基に、適切な候補者を選ぶ。条件に合致しない学生を選ばないため、従来通りの人数を採用する場合、面接する学生の数は半分に減らせる」と話す。AIの精度が高まれば、書類選考だけでなく適性検査や1次面接すらも省けるようになると期待している。

 AIはコンピューター上に人間の脳を模した神経回路を作り、条件分岐しながら認識したり、推論したりする技術だ。神経回路が短いほど早く答えを導き出せる。RAPIDに搭載したAIはその神経回路が以前より700分の1と短いのが特徴だ。一般的なパソコンでも使えるため、企業の採用選考にも適用できるようになった。NECは既に複数の企業と共同で試験を重ねている。

 AIが面接官代わりとなることで、人事担当者の“思い込み”を正せる可能性もある。

 例えば「ガッツがある人」を採用したい企業の場合、人事担当者は体育会系の部活動出身の学生から探そうとする。だがAIが過去の合否を基に判定すると、体育会系よりむしろ、履歴書に「積極的に取り組む」「着実に役割をこなすことが得意」といった趣旨を書いた学生を選ぶ方が効果的だと分かった。AIを活用すれば、無駄な面接や採用にかかる時間を減らせ、採用したい学生に向き合える時間が長くなる。

 NECは企業の人事情報システムとの連携も視野に入れる。3~5年後の人事評価と組み合わせてAIが分析することで、採用時の判定精度をさらに高められると考える。「いずれは経営幹部に出世した人の履歴書や異動履歴をAIに学習させたい」(上保シニアマネージャー)。NECはRAPIDを基にした人材マッチングシステムを求人サイトを運営する企業などへ売り込み、2017年度は10社程度の導入を見込んでいる。

 優秀な社員の特徴をAIに学習させ、似たような素養を持つ学生を自動的に探す。こうした技術開発に取り組むのが大阪市のアイプラグだ。

 舞台となるのが同社の新卒採用サイト「OfferBox(オファーボックス)」。学生から応募する一般的な就活サイトとは逆に、企業が気になる学生にアプローチするのが特徴だ。登録する学生数は約4万人に達する。

 まずは企業内で活躍している社員にアンケートを実施し、「協調性」や「困難に立ち向かう力」などを数値化。企業ごとに理想の人物像を作り上げる。それと似た回答をした学生をAIで抽出。企業側に面接を申し出るよう促す。

 AIが“社風”に合った学生を選抜するため、採用後の早期退職が防止できる効果がある。アイプラグの中野智哉社長は「我が社で活躍する社員とAIが抽出した学生を比べたところ、部活のほか、半年で20kgダイエットした経験があることまで同じで驚いた」という。自社で活躍できそうな人材を発掘するのも、AIの役割になりそうだ。