意思の力で物体を動かす「念力」や他人の心を読む「読心術」──。SF(空想科学)の中だけに存在していたこうした能力を人間は手にしつつある。その道を開いたのが、ここ数年で急速に開発が進む脳波分析の技術だ。

精神状態によって波形が大きく異なる
●主な状況と脳波の動き

 人間の脳内では、微弱な無数の電気が様々な方向に絶えず流れている。この電流を電極を使って記録したものが脳波で、周波数に応じて大きく4種類に分けられる。すなわち、眠っている時に現れる「δ(デルタ)波」(0.4~4Hz)、深く落ち着いた状態の時に出現する「θ(シータ)波」(4~6Hz)、安静時に現れる「α(アルファ)波」(7~14Hz)、脳が活発に働いている状態の時に出る「β(ベータ)波」(14~26Hz)だ。

 物事に集中している際や、興味、ストレスを感じている時などに出る脳波は、複数の周波数帯から成る。これをパターン化することで人間の精神状態を細かく判別し、結果を人々の生活や企業活動に生かそうとする動きが進む。

 活発に研究されている分野の一つに「動作支援」がある。測定した脳波の特徴からユーザーが何をしたいかを判断し、その人のイメージ通りに機器を動かすのだ。「BMI(ブレーン・マシン・インターフェース)」とも呼ばれる。この仕組みを障害者の動作支援に生かそうとしているのが国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)だ。

 ATRは2011年から、NTT、島津製作所、積水ハウス、慶応義塾大学の協力を得て、障害者が自宅で不自由なく生活できるシステムを備えた住宅「BMIハウス」の開発を進めている。車椅子に乗るユーザーを想定し、日常生活に必要な4つの動作を2020年頃をめどに実用化しようとしている。