周囲に与える不快感が焦点

 国内の紙巻きたばこの販売本数が10年間で約4割減少する中で、加熱式たばこは久々のヒット商品になっている。PMJの續木マネジャーはヒットの要因を「『喫煙は続けたい。だが周りには不快な思いをさせたくない』という愛煙家の希望にマッチした」と分析する。

 大手3社は有害物質の発生量の少なさを、加熱式たばこの利点に挙げる。ホルムアルデヒドやベンゼンなど有害物質の発生量は、通常の紙巻きたばこに対して1割以下、JTのプルーム・テックは1%程度にとどまると主張する。有害物質の発生量が減り衣服などへの臭い移りも抑えられるという。

 これには加熱温度が大きく影響する。一般的にたばこ葉を加熱すると「200度前後で成分の分解(熱分解)がスタート。600度を超えるとたばこ葉が燃える燃焼状態になる」(BATジャパン)という。温度が上がるほど、たばこ葉の熱分解や燃焼による有害物質の発生量が増えてしまう。

 紙巻きたばこでは喫煙時に最高900度に達する。一方で加熱式たばこの温度は最も高温のアイコスでも300~350度に抑えている。燃焼させない工夫こそが、有害物質の抑制につながっているという。

 加熱式たばこの原理は3社とも共通している。いずれも電子機器(本体)を使って専用たばこを加熱し、ニコチンなどの成分を含んだ蒸気を生み出す。本体の希望小売価格は4000~1万円程度で、専用たばこ1ケースは紙巻きたばことほぼ同額に設定している。

 ただ喫煙スタイル(形状)や加熱方法などは三者三様だ。「既存の紙巻きたばこユーザーを、どれだけスムーズに移行させられるか」をテーマに、各社が知恵を絞っている。

 「追求したのは本物の満足感」。PMJの續木マネジャーはアイコスを製品化した際のこだわりをこう振り返る。加熱温度は300~350度と、3社の中で最も高温。1本吸うごとに、専用の充電ケースで約4分間の充電が必要となる。「加熱温度や外形サイズは数多くのパターンを試したうえで決定した」(續木マネジャー)という。

 スイッチを入れてから、喫煙できるまでの時間は約20秒。専用たばこにヒーターの役割を担う金属板を差し込み、直接加熱する。短時間での加熱を実現するため、金属板の素材には熱伝導性が高い金と白金を使用する。たばこ葉の形状も見直し、気密性を高めた。加熱時にはセンサーで内部の温度を検知し、専用ICを使ってヒーターの温度を制御しているという。

 これに対しBATジャパンのグローの「売り」は連続使用だ。容量が2900ミリアンペア時と大型のリチウムイオン電池を搭載し、専用たばこを30本連続で吸えるという。本体の外形サイズは85×44×22mmと大きく、手で握って吸うことになるが「新ジャンルの商品として従来の紙巻きたばことは異なる喫煙スタイルを訴求していく」(BATジャパンの上原奈美NGPブランドグループマネジャー)考えだ。

 重視したのは熱対策だ。グローではたばこの周囲に配置した円筒状のヒーターで、葉の外側を240度で加熱する。この熱が本体表面に伝わると事故につながりかねない。BATジャパンではヒーター周辺をステンレス製のカバーで覆い、断熱性を高めたという。

 「紙巻きたばこの所作にできる限り近づけた」。JTのプルーム・テックの特徴は、直径約9mmの円柱形状をした本体だ。指2本で挟め、従来の紙巻きたばこに近い喫煙スタイルを実現した。

 小型化を実現するために、プルーム・テックは蒸気の発生方法を工夫した。ユーザーが本体に口を付けて「吸う」と、反対側に搭載したセンサーが吸引による圧力変化を検知する。次に本体部分にあるヒーターが自動で作動し、「カートリッジ」内の液体が加熱されていく。液体はグリセリンや水などからなり、「40度以下で気化する」(JT)という。その蒸気がたばこ葉を封入した「カプセル」を通過。その際に、ニコチンなどの成分が蒸気に抽出され、ユーザーの口に届く。大型の電池やヒーターが不要で、小型化を実現した。