北朝鮮からのミサイル攻撃の脅威は「これまでと異なる次元に達した」(安倍総理)。米政権も北朝鮮に対する「戦略的忍耐の時代は終わった」と表明し、軍事行動も視野に入る。もし、日本に弾道ミサイルが飛来してきたらどう防ぐのか。元航空自衛官が解説する。
日本と海を隔てた隣国、北朝鮮。核・ミサイル技術を進展させ、周辺国の警告を無視するかのように核実験や弾道ミサイルの発射を繰り返している。
万が一、日本に核・生物・化学弾頭を搭載した弾道ミサイルが飛来したら、私たちはどの程度、有効に対処できるのか。本稿では、北朝鮮の弾道ミサイル能力の現状を踏まえ、日本や米国が保有する弾道ミサイル防衛システムの概要について解説したい。
2016(平成28)年度版の防衛白書によると、北朝鮮は主に5種類の弾道ミサイルを保有または開発しているとされる。この「弾道ミサイル」とは、ロケットエンジンで打ち上げた後、放物線の弾道軌道を描いて宇宙空間を飛翔するミサイルを指す。米軍のトマホークのように大気圏中を任意のコースで飛行する「巡航ミサイル」とは区別される。
弾道ミサイルの性能は、その飛距離が性能を測る主要な指標となる。射程距離が1000km程度以下は短距離弾道ミサイル(SRBM)、1000km~3000km程度は準中距離弾道ミサイル(MRBM)、3000km~5500km程度は中距離弾道ミサイル(IRBM)と分類され、それ以上の射程を有するものは大陸間弾道ミサイル(ICBM)となる。
●北朝鮮が保有する弾道ミサイルとその能力
北朝鮮は、SRBM「スカッドER」、日本を射程に収めることのできるMRBM「ノドン」「テポドン」およびIRBM「ムスダン」や、大規模な米軍基地が所在するグアムを狙えるICBM「テポドン2」を保有するとみられる。
また、現在ではハワイの米太平洋軍司令部(日本・中国・韓国周辺地域での作戦中枢)や、米国西海岸を射程に収めるテポドン2の派生型も開発中であるとされる。これらの弾道ミサイルが日本や米国に向けて発射された場合、日米の弾道ミサイル防衛システムはどのように機能するのか。
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