通信コストは10分の1に
1つ目の特徴は「コストの安さ」。前述の北海道の牧場では、乳牛と基地局間の通信は無線LANのように自由に使える。1頭1頭に装着したセンサーに携帯電話のSIMカードを入れる必要がなく、基地局に接続した回線の通信費用のみを支払えばよい。
携帯電話を使う場合、法人向けの通信回線でも月額数百円は必要だ。LPWAを使えば1回線分の料金で、複数の端末をインターネットに接続できる。センサーメーカーでLPWAを使った駐車場管理サービスを提供しているオプテックスによれば、設置台数にもよるが、端末1台あたりの通信コストは、月額数十円程度になるという。
通信機器のコストも安くできる。センサーなどにSIMカードを内蔵して通信するケースでは「特別な機器を組み込む必要があり、それだけで数千円かかることもある」(ソフトバンク)。一方でLPWAの場合は、携帯電話ほど高度な通信ではないため、機器のコストは数百円程度とみられている。
2つ目の特徴は消費電力の低さだ。通信機器の仕様によっては単3電池2本で数年間動き、理論上は10年以上使えるケースもあるという。センサーで収集するデータのサイズをできるだけ小さくしたり、1日に1回、月に1回など情報を送る頻度を極端に落としたりしているためだ。
日立システムズは昨年末から今年にかけて、新潟市と協力してマンホールにセンサーを取り付け、LPWAで通信する実証実験を行っている。同社IoT推進グループの上川恭平技師は、「マンホールによっては、山奥などで電源確保がそもそも難しかったり、電池にしても遠方で交換に行くのが大変だったりする。電池が長持ちするメリットは大きい」と説明する。他にも、橋梁やダムなどのインフラ管理で、LPWAを使ったセンサーが活躍しそうだ。

通信できる距離の長さが3つ目の利点だ。見通しのいい場所では、数kmから十数km先まで電波が届くという。
LPWAの実証実験を多く手掛けるNTTドコモの坂本秀治第四営業担当部長は、「鳥獣被害を防ぐ罠にセンサーを取り付けたり、温度や水位を測るために水田にセンサーを差し込んだりしている。センサーを設置する場所が山奥や広大な田んぼのため、電波が数km飛ぶメリットは大きい」と語る。
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