水の使用量を6割削減

 インクジェット捺染ではパソコンで作ったデータをそのまま印刷できるため、版が不要になる。洗浄工程を省くことで、スクリーン捺染と比べて水の使用量を約6割減らせるという。

 一方、染色スピードの遅さがインクジェット捺染の課題とされてきた。従来方式では、インクを射出するヘッド部分が左右に往復運動を繰り返すことで模様を付けていくが、その分どうしてもスピードが落ちてしまう。

 この問題を克服したのが、コニカミノルタが15年末に発売した「SP-1」だ。生地の幅をすべて覆う横長のヘッド部分を、6~8列にわたって並べることで、高速で捺染できるようにした。

 スクリーン捺染の場合は、1時間あたりで2000~3000平方メートルの生地を染めることができる。従来方式では同1000平方メートルが限界だったが、SP-1はスクリーン捺染と同等以上のスピードが出せる。

 版の製作にかかる時間を短縮できるのもメリットだ。細かい修正もパソコン上で簡単にできる。アパレル業界では「少量多品種」が競争のカギとなっており、リードタイムを縮めるうえで不可欠な装置となりつつある。

 コニカミノルタは旧コニカ時代の1997年に同事業を始め、今でも市場をリードし続けている。先進的なアパレル企業が多い欧州を中心に力を入れつつ、今後は需要増が見込めるアジアでの展開を加速する。

 ファストファッションの登場以降、アパレルの生産過程における様々な環境負荷に注目が集まるようになった。近年とりわけ世界的な批判が高まっているのが、染色に大量の水を使うことによる、水資源の汚染問題だ。

 公害問題の改善を促すため、アパレル関連企業に工業用水の取水・排水制限をかける国も増えているという。中国に集中していたスクリーン捺染を主力とする工場が、東南アジア諸国連合(ASEAN)やバングラデシュに移転する動きが相次いだのは、こうした規制強化の影響からだ。

 環境に配慮しないアパレル企業が持続的に成長するのは不可能となりつつある。そこで、技術的には以前から存在していた「水を汚さない染色方法」の研究や実用化に、かつてない注目が集まっている。コニカミノルタ以外にも、そこに商機を見いだす企業はある。

 石川県の染色加工メーカー、小松精練はインクジェット捺染による生地「モナリザ」を手掛けている。

 インクジェット捺染が優れているのは、水質汚染問題の改善だけではない。スクリーン捺染は使う色の数だけ版が必要になる。一方、インクジェット捺染は1粒当たり数ピコリットル(ピコは1兆分の1)のインクで細かく染め分けることが可能だ。

<b>小松精練は、インクジェット捺染で繊細な質感を表現する(左)。同社の池田哲夫社長(右)</b>(写真=右:江田 健一)
小松精練は、インクジェット捺染で繊細な質感を表現する(左)。同社の池田哲夫社長(右)(写真=右:江田 健一)

 小松精練がセイコーエプソンから調達したインクジェット捺染機は1670万色に対応し、繊細な質感を表現できる。生地自体はポリエステルなのに、一見するとデニムや毛織にしか見えない生地がモナリザの代表作で、国内外のアパレル企業に卸している。

 細かいデザインが必要ない無地染めには、現時点ではインクジェット捺染が普及していない。小松精練の池田哲夫社長は「無地にもインクジェット捺染が普及すれば、水の使用量は今の14分の1に下げられる」と話す。

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