17年は5000億円市場に
三井住友銀行企業調査部の澤口昭太郎氏は「向こう5年間は処理装置の需要が急増し、その後も新造船向けなど安定需要が期待できる」と指摘する。調査会社の富士経済の予測では、バラスト水処理装置の市場が2017年には約5000億円と、3年前の約9倍に拡大する。
新たに生まれるマーケットを巡り、様々なメーカーがバラスト水処理装置の開発競争を繰り広げている。
冒頭のJFEエンジは、浄水場向けに培ってきたフィルターと薬剤を組み合わせて生物を除去する方式だ。フィルターを併用することで、コストのかかる薬剤の投入量を抑える。
処理工程は主に3段階ある。ポンプで船内に取り込んだ海水をフィルターユニットでろ過。大きさ0.05mm以上の生物などを阻止し、海中に戻すのが第1段階だ。大きなゴミなどは、バラスト水の取り入れ口に設置した格子によって混入を防ぐ。
フィルターを通過した海水には依然として、0.05mm未満の生物類が含まれる。そこで第2段階では、殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウムを投入する。水道水やプールの水の消毒などにも用いられている一般的な薬剤だ。
例えば1万トンのバラスト水に対しては、生物類の量にもよるが、通常250リットル程度の液体タイプの次亜塩素酸ナトリウムを投入して撹拌する。殺滅するほど水中の塩素濃度は下がっていくため、処理に必要な3PPM前後を維持するよう次亜塩素酸ナトリウムの投入量を自動制御。ちなみに、プールの水の塩素濃度は1PPM、カットサラダなどの殺菌に使う塩素水の濃度は100PPM前後という。
処理済みで一定の塩素を含んだバラスト水を、そのまま海に戻すわけにはいかない。第3段階では亜硫酸ナトリウムを投入して残留塩素を中和し、無害化する。亜硫酸ナトリウムはワインの酸化防止剤にも使われ、1万トンのバラスト水に対して15kgを用いる。
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