船舶のバランスを保つため、船底のタンクに搭載する「バラスト水」。 貨物船には不可欠だが、海水と一緒に生物が移動すると生態系破壊につながる。 バラスト水管理条約の発効を9月に控え、処理技術の開発が加速する。

船舶移動に伴う生態系の乱れが深刻化
●バラスト水とともに生物類が遠隔地へ運ばれる
(写真=アフロ)

 瀬戸内海に面したジャパンマリンユナイテッドの造船所(広島県呉市)で2月、6万トン級の最新鋭ばら積み船が竣工した。一見、普通の船だが、内部には従来見られなかった「バラスト水処理装置」が搭載されている。装置を作ったのはJFEエンジニアリングだ。

 貨物船やタンカーなどは荷物を積んでいないとき、船底のタンクに海水を注入している。航行時にバランスを保つための重りとして利用する「バラスト水」だ。船が軽くなり重心が高くなると、転覆の恐れがあるからだ。多くの船では載貨重量の3分の1程度までバラスト水を入れる。一方で、港で荷物を積み込む際にはバラスト水が不要となるため船外に排水する。

 このバラスト水が世界中で悪さをする。世界では年に数十億トンのバラスト水が別の海域へ運ばれているとされるが、水中にはエビなどの魚介類、プランクトンや細菌などが混入している。船舶と一緒に様々な海洋生物が世界中を行き交うことで、各地の生態系を乱し、自然環境や漁業などに打撃を与えているとの指摘が高まっている。

 この問題を解消しようと取り組んでいるのが、国際海事機関(IMO)だ。今年9月に「バラスト水管理条約」を発効させ、締結国に寄港する外航船に処理装置の設置を義務付ける。バラスト水に含まれる生物を沿岸の100~1万分の1、細菌は海水浴場並みにまで殺滅し、越境移動を防ぐのが目標だ。条約発効後に建造が始まる新造船はもちろん、既存船舶も5年に1度の定期検査の際に対応する必要がある。コストは1隻数千万円から1億円前後となる見通しだ。