システム出力は初代の206キロワット(kW)から2代目は427kWへと2.1倍に拡大。車体寸法は初代が全長4430×全幅1810×全高1170mmだったのに対し、2代目は全長4490×全幅1940×全高1215mmに。ホイールベースも2530mmから2630mmへと100mmも伸びた。
これだけ車体や車室容積、システム出力が大きくなったにもかかわらず、2代目のホワイトボディー(塗装する前のボディーシェル)は216kgと、初代より16kg増に抑えた。これは多くの軽量化努力のたまものだ。
スペースフレーム構造の一つの利点は、骨格と意匠面を明確に切り分けられること。必要な剛性や強度を確保するために質量が大きくなりがちな骨格の部材を車輪の内側に集めやすい。
その上、骨格の長手方向を車体に加わる荷重の方向と一致させるようにすることで、より小さな質量でより大きな剛性を持たせられる。高い運動性能が求められ、適切な質量配分や高い剛性、軽さが重要なスーパーカーにとって、もってこいの構造といえる。
ホンダが着目したのはそれだけではない。スペースフレーム構造がアルミニウム合金と非常に相性が良いことだ。例えば、アルミニウム合金は、鋼材と違って押し出し材を成形しやすい。鋳物にするにしても、比重が軽いため鋼材よりも軽くできる。このため、車体に鋼材を使う場合よりも押し出し材や鋳物を利用しやすいのだ(図3)。
しかも、骨格として主に使うことになるのは押し出し材で、それを構成する面の板厚は面ごとに変えられる。例えば、角材では、4つの面の板厚をそれぞれ変えられ、強度や剛性を上げたい面だけを厚くすることが可能なのだ。必要に応じて押し出し材の内部にリブを立てることもできる。
モノコック構造の弱点を克服
初代NSXで採用されたモノコック構造ではそうはいかない。板の一部だけを厚くすることは、テーラードブランク(板厚など異なる鋼鈑のつなぎ合わせ)などを使わない限りできないからだ。かといって、一枚の板を丸ごと厚くすると重くなるため、通常は部分的に補強板を追加する。
そこで困るのが、さまざまな方向からの部材をしっかりと結合しなければならない部位の存在だ。車体の骨格には、必要な強度・剛性を確保するためにどうしてもそうした部位が必要になる。例えば、ピラー(窓柱)とサイドシル(左右のドアの下部分)の結合部。前からはサイドシル、上からはピラー、横からはクロスメンバー(車両の左右方向に渡した骨格部材の一種)が集まってくる。そこに補強板が1枚、2枚と加わると、接合しなければならない板は4枚以上となる。すると一度のスポット溶接では対応できない場合が出てくる。
そうした場合、モノコック構造では通常、集まってくる板をグループに分け段階的にスポット溶接を施す。その際、各板への力の伝わり方を考慮して板のグループ分けや合わせ方を決める。すると板組みが複雑になり重くなる。
これに対し、アルミニウム合金を主体としたスペースフレーム構造では、多数の管材が集まる結合部にアルミニウム合金製の鋳物を適用して、結合部の構造を単純化しながら力を滑らかに伝えることが可能になる。構造の単純化は軽量化にも寄与する。実際、2代目では、こうした結合部に重力鋳造のアルミニウム合金を使う。
2代目では、同じ鋳物でも「アブレーション鋳造」を用いた部位もある。フロントのサスペンション取り付け部(上下左右で4カ所)と、リアのサスペンション取り付け部(左右で2カ所)である(図4)。
アブレーション鋳造は、水に溶けやすいバインダー(接着剤)で固めた砂型に溶融したアルミニウム合金を流し込み、十数~20分ほどしてから水を掛けて砂を流し落とし鋳物を急冷する鋳造法。組織を微細化することで伸びや強度、剛性が増す。その伸びは12%と高く、変形させても割れにくいことから衝突時のエネルギーを吸収させやすい。リアのサスペンション取り付け部にも同鋳造品を使っているが、こちらは強度を重視してのこと。同部位にはエンジンやサスペンションから大きな力が入ってくるためだ。
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