人間の動きを製品が検知

 サイバーダインが採用したのは「サイバニクス」と呼ばれる技術だ。人間が動作をする際は、脳から神経を通じて筋肉へ電気信号が送られる。その微弱な「生体電位信号」を皮膚表面に当てた電極を通じて検出し、装着者が実際に動作を開始しようとした瞬間に作業者とHALが一体化して動くようにしている。腰に装着するタイプのHALの生体電位信号は、背筋の腰に近い部分の皮膚に当てた電極を通じて検出する。

高齢の作業者も活躍できる
高齢の作業者も活躍できる
海運業社の辰巳商会は大阪南港での運搬作業にアクティブリンクを活用。年齢の高い作業者に好評だ(写真=福島 正造)
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 奈良市にあるベンチャー企業、アクティブリンクが開発した「AWN-03」も、バッテリーで駆動するパワーアシストスーツだ。リュックを背負うように装着すると、使用者の腰の動きに合わせてギアが回転し、上体を引き上げる(上の写真)。腰の動きを検知するセンサーを内蔵しているのが特徴で、「荷物を持ち上げる」「保持する」「歩行する」「降ろす」といった作業内容を判断。人の動作によって補助する動きを自動で切り替える。補助する力は最大15kg程度だ。既に180台を出荷。大阪市にある海運業社の辰巳商会が大阪南港での港湾運送作業に活用するなど10社以上で導入されている。

<b>アクティブリンクの2足歩行型のアシストスーツ</b>(写真=福島 正造)
アクティブリンクの2足歩行型のアシストスーツ(写真=福島 正造)
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 アクティブリンクは、パナソニックの社内ベンチャーとして2003年に設立。「パワーバリアレス社会」の実現を理念に、主に物流、建設、土木現場に着目して製品の開発を進めている。

 現在、開発に着手しているのは、荷物を持った状態での歩行作業に特化した製品。腰から足全体に装着して60kg程度の荷物を運べる。起伏や障害物をよけながら2足歩行するためにディスプレー、カメラ、センサー、AI(人工知能)チップなどを搭載。危険を回避しながらスムーズな動きを補助する。

 農機メーカーのクボタは2017年1月、農作業向けの「WIN-1」を発売した。アシスト機能を使って荷物を腰の高さに持ち上げた後、さらにワイヤーを使って頭の高さまで持ち上げられる。

<b>クボタの製品は荷物を頭の位置まで上げられる</b>(写真=福島 正造)
クボタの製品は荷物を頭の位置まで上げられる(写真=福島 正造)
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 頭の高さにあるフレームの先端から下りているワイヤーを荷物の取っ手に引っ掛け、ボタン操作でワイヤーを巻き取ったり、緩めたりして上下させる。バッテリー駆動で、20kgの補助力がある。

 農作業者の高齢化が進む中、クボタは作業場でのロボット活用に着目する。パワーアシストスーツの開発もその一環で、農作物を収納したコンテナをトラックなどに積み込む作業を想定した。

 動力に、バッテリーではなく「人工筋肉」を活用しているのが、東京理科大学発ベンチャーのイノフィス(東京都新宿区)だ。同社が販売する「マッスルスーツ」は、マッキベン型と呼ばれる人工筋肉を搭載(下の図)。メッシュ生地で覆ったゴムチューブに圧縮空気を入れると直径が膨張し、長さが縮む。この引っ張る力を利用して、背負ったパワーアシストスーツで上半身を引き上げて荷物を持ち上げる作業をサポートする。

空気で動力を得る人工筋肉
●マッキベン型人工筋肉の仕組み
空気で動力を得る人工筋肉<br />●マッキベン型人工筋肉の仕組み
<b>イノフィスの製品は背面の2カ所に人工筋肉を内蔵する</b>(写真=竹井 俊晴)
イノフィスの製品は背面の2カ所に人工筋肉を内蔵する(写真=竹井 俊晴)
<b>東工大の鈴森康一教授はジャケット型のアシストスーツを試作</b>
東工大の鈴森康一教授はジャケット型のアシストスーツを試作

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