センサーで稼働状況を把握

 家電製品の多くはそれぞれ特徴的な電流の流れ(波形)を持っている。「掃除機の場合、電源を入れた瞬間『ラッシュ電流』と呼ばれる大きな電流が流れて波が大きくなる」(同・中城陽氏)といった具合だ。

 電力供給の根本に当たる分電盤には、家電ごとに特徴的な波形がごちゃまぜになった電流が流れ込んでいる。時々の家電の使用状況によって細かく波の形が小さくなったり大きくなったりしているわけだ。

家電のデータをサービス事業者と共有
●東電PGが目指すビジネスモデル
家電のデータをサービス事業者と共有<br />●東電PGが目指すビジネスモデル
[画像のクリックで拡大表示]

 随時変化している電流の波形を分電盤内のセンサーで捕捉し、サーバーに送って各家電が持つ波形の特徴をヒントに分離する。これにより、いつ、どんな家電が稼働しているのか把握できる。この技術は「機器の分離(ディスアグリゲーション)」と呼ばれ、ソニー出身の只野太郎氏が2013年に創業したベンチャー企業インフォメティスと、韓国を中心に事業展開する米エンコアードの2社が手掛けている。そこで東電PGは両社と連携し、それぞれのセンサーを分電盤に取り付けた。

 インフォメティスやエンコアードは洗濯機やエアコン、電子レンジなど住宅で使われる10種類前後の代表的な家電の波形をあらかじめ把握しており、両社とも8~9割の精度で何がいつ動いたか明らかにできるという。さらに「ニーズがあれば分析対象にする家電の種類を増やしていく」(インフォメティスの只野社長)考えだ。

 東電PG側はディスアグリゲーション技術で得た家電の稼働情報を、プライバシーに配慮した上で様々な企業に提供する事業モデルを模索する。

 その応用範囲は広い。例えば宅配事業者であれば、家電を使っているかどうかで在宅状況が分かるため、配送の効率化が望めるだろう。炊飯器を頻繁に使っている家庭向けに、調味料メーカーが炊き込みご飯のもとなどを個別に販売したり、深夜に洗濯機をよく使う家庭向けに部屋干し用の洗剤を売り込んだりするなど「細やかなマーケティングが可能だ」(エンコアードの本橋惠一・マーケティング本部長)。古くてエネルギー効率の悪い家電を使っている住宅向けに、家電メーカーが最新の省エネ家電を提案したり、製品のメンテナンスに活用したりする道もある。

 もっとも、センサーが取得する情報は膨大で、そのままでは扱いにくい。宅配業者は大まかに在宅かどうか分かればいいし、調味料メーカーは炊飯器の稼働状況がつかめればいい。

 そこでサーバーにデータを蓄積し、各企業が求める最適な形で情報提供できるよう加工する役割を担うのが日立製作所だ。「当社のIoT(モノのインターネット)のノウハウがあれば、例えばマンションの住人が一斉にエアコンをつけたタイミングを把握したり、(東電PG管内の)全データと比較するとどうなのか分析したりするなど、様々に家電情報を利用できる」とエネルギー情報システム本部の福岡昇平・本部長は自信を見せる。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1512文字 / 全文文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題