11月23、24日の2日間、東京都内で「Maker Faire Tokyo(メイカー・フェア・トーキョー)2014」が開かれた。名前の通り、電子工作やDIYにいそしむ「Maker(作り手)」たちの発表・交流の場だ。モノ作りスタートアップが注目される今日この頃。趣味と商売の垣根を、現場を歩いて考えてみた。

 食べ慣れた「コアラのマーチ」の箱が激しく揺れていた。ガタゴトと動くたびに、左上のカウンターの値もどんどんと増えていく。20分間で約5000回という振動スピードだそうで、コアラの顔はもはや判別不能だ。都内で11月23、24日の2日間に渡って開かれたモノ作りイベント「Maker Fair Tokyo(メイカー・フェア・トーキョー)」で、最初に出会った作品だった。

20分で約5000回揺れる「コアラのマーチ振り機」

 なぜ、コアラのマーチを振るのか。聞けば、ある時期に「コアラのマーチを振ると大きなチョコボールのようになって美味しい」と、ネットで話題になったのだという。筆者は知らなかったので調べてみたところ、確かにコアラのマーチを手に持って振る親子の動画などが見つかった。

コアラのマーチを振るとボールのようになる。

 しかしこれ、自分で試してみるとなかなか骨が折れる。出展した京都電創庵のメンバーによれば、「ボール状にするには約5000回振るのが目安だが、人力だと1時間かかるし疲れてしまう」。「振る」という行為を機械に任せられれば「楽して早く、新しい食べ方を楽しめる」と、この装置を考案したそうだ。電子工作用のパーツを組み合わせて作っていた。

 この作品を見て、読者はどんな感想を持っただろうか。「用途は極めて限定的で、電子工作という域を出ない」と思った方が大半だろう。出展者自身も「コアラのマーチ振り機」はあくまで趣味で作った装置で、製品化をするつもりは「全くない」と言っていた。ただ、人が疲れてしまう作業を機械や技術に置き換えて世の中を便利にするというのは、モノ作り企業の根底に流れる発想でもある。

 実際、前身のイベントから数えて今年で10回目を迎えた「Maker Fair Tokyo(メイカー・フェア・トーキョー)」では、年を追うごとにモノ作りスタートアップと呼ばれる企業の出展も増えてきている。例えば、スケルトニクス(東京都八王子市)が展示した巨大なロボットは1回500円という価格にもかかわらず、試乗する人が絶えなかった。

スケルトニクスは試乗者が絶えず

 趣味とビジネスが混沌とする現場を歩いてみた。

3Dプリンターに日本らしさを

 まず下馬評の高かった「和菓子を出力する3Dフードプリンター」を見に行くと、ちょうど出力が始まるところだった。出展者は、東京工業大学附属科学技術高等学校の門田ロボテク。高校3年生の真島大樹君が制作したものだ。テルモのシリンダーから練りきりが押し出されていく姿を、シンガポール人の女性が「クール」と連呼していた。

桜色の練りきりを、桜の形に出力するプリンター

 真島君がこの装置を制作しようと思ったのは、米NASAが支援しているピザの3Dプリンターの記事を読んだから。もともと3Dプリンティングという技術に関心があったため、これを高校の課題で作ろうと思い立った。しかし、調べてみると沢山の材料を使うピザのプリンターを作るのは一筋縄ではいかないことがわかった。造形のしやすさや美味しさ、それに加えて、日本らしさや日本の独自性を見せられるものがいいと、和菓子にたどり着いた。

 指導教官の門田和雄氏に今後の展開を尋ねると、「後輩が来年改良版を作るかもしれないけれど、今回はこれでひと区切り」とのこと。樹脂の3Dプリンターが国内外に溢れるなかで、「日本らしさ」をうまく取り入れたアイデアであるだけに、イベント出展で終わってしまうのは寂しさを覚えた。

 食べ物を出力するという点では、VENTの「corn designer」もチョコパフでのハート柄の出力に挑戦していた。VENTは横浜国立大学で2013年度のロボットコンテストに出場したメンバーが、それぞれ別の大学院に進みつつも、再集結したチームだ。細いベルトコンベアでチョコパフを1つ1つ運んでから指定した位置に落とす仕組み。スピードやハート柄の出来栄えは評価がわかれそうだが、本人たちは「朝食をもっと楽しくしたい」と真剣そのものだ。商売っ気はないが、とても楽しそうだった。

チョコパフでハート柄を描く
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