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 2020年7月、新型コロナウイルスの感染拡大も終わりが見えない中、世界83カ国・地域の生徒が在籍する軽井沢の全寮制高校「ユナイテッド・ワールド・カレッジ ISAK ジャパン(UWC ISAK)」は、オンライン教育による新たなプロジェクト「ISAKx」を発表した。

 日本では3月頭に政府から全国一斉の休校要請が出され、その後再開されたものの、教育現場では今なお混乱が続いている。また世界各国で入国制限や検疫強化などの措置がとられていることもあり、出入国はいまだ困難な状況だ。多くの留学生を抱えているUWC ISAKでは、さまざまな対応に追われることとなった。


 まさに未曽有の事態。先の見えない混乱と動揺が広がる中で、UWC ISAKでは組織に降りかかる問題をどのように解決していったのか。そして、このピンチをチャンスに変えて、新たな発想のプロジェクトに着手することになった経緯をふり返る。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、これまで以上にオンライン教育に注目が集まっている昨今、不慣れなオンライン授業に戸惑う教育現場の問題が浮き彫りになっている。

 その点、ユナイテッド・ワールド・カレッジ ISAK ジャパン(UWC ISAK)では、もともと1人1台のデバイスを持ち、出欠確認や校内連絡などはオンライン上でやりとりをしてきた。また、宿題の提出も基本的にはオンライン。授業中に生徒それぞれが自らインターネットを駆使してリサーチすることも日常的にあり、そこへオンライン授業が組み込まれても、運用改善の余地こそあれ、大きな混乱はなかったという。

テクノロジー先進国でありながら遅れを取る日本の教育

 UWC ISAK代表理事の小林りんは、世界に比べ、日本の教育現場のIT(情報技術)化が大幅に後れを取っていることを以前から感じていた。

 「私が2004年にスタンフォード大学に留学したときには、全米ですでにBlackBoard(ウェブブラウザーを利用した教育支援システム)が普及し始めていて、課題図書も宿題も全部オンライン。2000年代の初頭から米国の高等教育機関ではそれが浸透していましたから、日本は感覚的に20年くらい遅れているかもしれません」