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 独自のカリキュラムで新人を「ゼロ」から育成する、建設業界に特化した技術者派遣会社。高齢化などで未曽有の人手不足に襲われる建設現場の救世主として急成長している。

(日経ビジネス2018年11月5日号より転載)

手厚いケアで離職防ぐ
派遣先ではプレッシャーも多い。入社後3カ月のフォローアップ研修では、同期が互いの仕事ぶりを積極的に褒め合い、絆を深める(写真=尾関 裕士)

 多くの企業を悩ませている慢性的な人手不足。とりわけ深刻なのは建設業界だ。2018年8月の有効求人倍率(パート除く)は全職種の平均が1.42倍だったのに対して、建築・土木・測量技術者は実に6.32倍と、平均をはるかに上回る水準に達している。

 「きつい、汚い、危険」といった「3K職場」のイメージから若者が集まりにくく、高齢化が加速。「数年後に日本の建設現場は回らなくなる」(業界関係者)という不安の声まで上がっている。

 こうした悩みに対応するサービスで急成長しているのが、建設業界に特化した技術者の派遣会社、共同エンジニアリング(東京・千代田)だ。ゼネコンの依頼を受けて、国内外の建設現場などに建築施工管理技士や、製図などの作業を担うCAD(コンピューターによる設計)技術者などを派遣する。

異例の定着率93%

DATA
共同エンジニアリング
2002年設立
本社 東京都千代田区
丸の内1-8-3
資本金 5000万円
社長 堀尾慎一郎
売上高 100億円
(2018年12月期見込み)
従業員数 約1900人
事業内容 建設関連技術者の育成・派遣
若手育成に力を入れて急成長
●共同エンジニアリングの売上高

 建設業向けの派遣会社は少なくないが、共同エンジニアリングは異色の存在だ。競合他社は建設会社OBなどの経験者が中心だが、同社は現場経験が全くない新卒や中途の人材を採用し、文字通り「ゼロ」から育成する。現在、派遣先で働く社員は約1750人。その8割が、業界経験のない人だという。

 しかも、同社の新入社員が2年目以降も働き続ける1年目の定着率は約93%。同業他社では、新入社員の半数が1年以内に離職することも珍しくないとされる。腰を据えて働く社員の「仕事の『品質』が派遣先から高く評価されている」(堀尾慎一郎社長)。業績は順調に拡大しており、2018年12月期は売上高100億円の大台を見込む。

 高い定着率の理由は、新人でも現場で活躍しやすい手厚い教育プログラムと、社員の気持ちに寄り添う、きめこまかなフォロー体制にある。

 測量技術やCADの使い方などの基本技能を15日間にわたって集中トレーニングするだけでなく、職場で周囲とうまくコミュニケーションして仕事をこなせる「ビジネススキル」教育に力を入れる。作業の漏れを防ぐ「ToDo(やること)」リストの作り方やメモの取り方、「報(告)・連(絡)・相(談)」を確実にする話し方などのスキルだ。

 その理由を堀尾社長はこう説明する。「今のほとんどの若手社員が現場に出てつまずくのが、コミュニケーション。様々な職種の職人が出入りし、年配者や気難しい人も多い。施工管理(現場監督)は、幅広い関係者との『報・連・相』の連続で、こうした仕事人としての基礎を徹底しないまま現場に出て挫折するケースが後を絶たない」