カシオは年間2500万台の関数電卓を販売する世界最大手。年5~10%で売り上げを伸ばし続け、電卓事業全体の利益率は17%に達する。原動力が「GAKUHAN」と名付けられた草の根の営業活動だ。語源は日本語の「学販」。樫尾和宏社長が時計とともに成長の柱と位置づける、教育事業の切り札だ。
だがこれまでは、真の実力を発揮できていたとは言いがたい。デジタルカメラなど派手な新商品を好んだ樫尾和雄前会長は、安定収益をもたらすが、地味な電卓事業への関心はそれほど強くなかった。各国の代理店や法人はそれぞれGAKUHAN活動を推進。担当者の熱意によって差が出たり、近隣国でのノウハウを共有できないなど「強みを十分に生かし切れていない」(和宏社長)状況が放置されていた。
15年にトップの座に就くとすぐ、和宏社長はGAKUHAN活動のテコ入れに乗り出した。日本に「学販企画室」を設置し、「専任担当者が各国のノウハウを体系化したり、共有化するサポートを始めた」(星登室長)。冒頭のフィリピンの事例は、マレーシアの担当者が教育出版社と組んで学校訪問を効率化した体験を応用したものだ。
バラバラだった組織
1957年に樫尾家の4兄弟が設立したカシオ計算機が転機を迎えている。18年6月18日、4兄弟の三男で30年間にわたって社長・会長を務めた和雄氏が亡くなった。経営を引き継いだのは長男の和宏社長。設立から60年を経て、ついに名実ともに世代交代となった。
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