全2492文字

 これらの施設の共通項は、夏秋シーズンも集客しやすい点だ。竜王は標高が高く、高山植物の観察や避暑地としての需要がある。首都圏から近い川場はサバイバルゲームやスケートボードの会場などとして活用することにした。

 サービス水準の改善では、レンタル事業と飲食施設をてこ入れ。気軽に来てもらえるようにレンタルウエアを充実させ、地元の食材を使った食事の提供も始めた。地域との連携に力を入れることで、施設の魅力を高めた。

 こうした取り組みが「地域とともに歩む再生請負人」といった評判につながる。12年、八方尾根、岩岳、栂池高原という日本を代表するスキー場を運営する白馬観光開発をグループ化した際も、以前のスキー場運営の実績が、地域に受け入れられる雰囲気を作った。

 鈴木社長には、白馬を再生させる青写真があった。同社が運営しない施設を含めて約10あるスキー場を連携させ、一つのリゾートとして売り出すことだ。だが、各スキー場は集客で競っており、なかなか一枚岩になれなかった。そんな時に、追い風が吹いてきた。

 インバウンド(訪日客)だ。10年代に入り、オーストラリアなどから日本を訪れるスキー客が増加。ライバルは北海道や志賀高原のスキー場で、地域が一体となって集客する必要が出てきたのだ。こうした中、白馬のスキー場は共通チケットシステムを導入する。日本スキー場開発が中心となって「ハクババレー」というブランドを立ち上げ、100以上のリフト・ゴンドラを1枚のICカードで利用できるようにした。

海外の顧客を掘り起こす

世界の富裕層を狙う鈴木周平社長

 海外で積極的な営業攻勢にも出た。鈴木社長はアジアからの客が増えると見込み、台湾や香港、中国などの旅行関係者を訪ね歩いた。15年ごろからは訪日外国人向けのスキースクールも登場。白馬で運営する3つのスキー場を利用する訪日外国人の数は約15万人と、全体の2割を占めるようになった。

 外国人を呼び込むための次の一手が、世界のスキーリフト共通券を発行する「ベイルリゾーツ」との提携。年間約900ドルで世界各地のスキー場のリフトが利用できるパスで、発行枚数は世界で74万枚以上に達するという。

 夏や秋の利用者も大幅に伸びている。18年7月期、雪のない「グリーンシーズン」の来場者は44万人と、14年7月期から4割増加。同じ期間に全社の売上高も3割増の64億円になった。

 集客力が高まってくると必要になるのが宿泊施設。9月、白馬観光開発は複数の古民家を改装し、宿場町風のリゾートにする計画を発表。民宿の負担軽減を狙い、飲食などを共通化して複数の宿泊施設を「1つの宿」のように運営する仕組みを作る。

 スキー場をマウンテンリゾートに変える──。一年通して楽しめる「山ライフ」の提案は、次第に受け入れられ始めている。「世界の富裕層が長期滞在するリゾートにする」(鈴木社長)という高い目標に向け、険しい道を一歩ずつ登ろうとしている。