コネクター一筋で利益率が安定的に20%を超す高収益企業。顧客の厳しい要求に素早く対応する「すぐやる文化」で、価格競争に陥らない製品を生み出してきた。もっとも圧倒的なシェアを誇るスマホ向けは市場が成熟。次の収益の柱に位置づける自動車向けに活路を見いだす。
(日経ビジネス2018年10月15日号より転載)

横浜市都筑区の整備された住宅街の一角にあるヒロセ電機の開発拠点「横浜センター」。そのビルの5階に同社の命運を握る“秘密部隊”がある。
「ASP室」。自動車分野での戦略商品を意味するオートモーティブ・ストラテジック・プロダクトの英語の頭文字を取ったこの部署では自動車向けコネクターの先行開発が進む。
3年前に石井和徳社長の肝いりで新設された。エース級社員を集め、自動車メーカーのニーズを先取りする形で、EV(電気自動車)などで必要となるコネクターを自ら考案、製品化している。
電子機器同士をつなぐケーブルの端子となるコネクター。ヒロセ電機はこの分野では世界屈指のメーカーだ。スマートフォン(スマホ)向けや産業機器向けなど使われる用途は100種類、製品数は4万種類に及ぶ。スマホ向けでは海外の最大手メーカーにも納入。この分野の世界シェアは約20%とトップを争う。
創業者の広瀬銈三氏が1937年に「広瀬商会」として発足させたのがヒロセ電機の始まりだ。電話用からVTRカメラ用、FA(ファクトリーオートメーション)制御機器用など様々な機器向けにコネクターを送り出し、90年代の携帯電話市場の広がりや2000年代のスマホの普及に合わせて急成長を遂げた。足元の売上高は1200億円強と1990年の2.4倍だ。
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