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 設置が簡単な住宅向けスマートロック市場でリードする。法人需要の開拓にも力を入れる。宅配や家事代行サービスから子供や高齢者の見守りまで、狙える領域は幅広い。

(日経ビジネス2018年10月15日号より転載)

(写真=村田 和聡)
自分で設置できる
両面テープで既設の鍵に取り付けて「スマート化」。スマートフォンを近づけると自動で開錠。ネットに接続すれば遠隔操作も

 スマートフォンを玄関のドアに外から近づけると、内側に設置された鍵が反応し、自動で開錠する──。通信機能を内蔵した鍵「スマートロック」。その日本企業の一つが、Qrio(キュリオ、東京都渋谷区)だ。

 キュリオのスマートロックの仕組みはこうだ。モーターやブルートゥースの通信機能などを内蔵した装置を両面テープでドアに貼り付ける。装置にスマホのブルートゥースで信号を送るとモーターが動き、鍵のつまみ部分が回って開いたり閉まったりする。

 Wi-Fiに接続する別売りの装置を使えば、鍵がインターネットにつながる。誰がいつ開けたのかを記録するだけでなく、リアルタイムで情報を特定のスマホに飛ばしたり、遠隔で開け閉めしたりもできる。

不便さを解消する

 キュリオを創業したのは、今年10月から顧問に就任した西條晋一氏。2015年8月の初代「キュリオスマートロック」発売から3年を経て、今年7月には反応速度が向上し、ポケットに入れたままでも反応する2代目の「キュリオ ロック」を発売した。発表初日に1000台の予約が入る、順調な滑り出しだ。

 「個人で不動産投資をしていると、不便なことばっかりなんですよ」。サイバーエージェントで取締役を務め、10以上の新規事業を立ち上げてきた西條氏がスマートロックに目を付けた起点には、投資した賃貸物件で自らが感じた不便さがあった。特に、入居者が出ていってから、次の契約者を見つけるまでの期間。家賃収入が止まるその期間の部屋の扱いに疑問を持ったという。

 例えば、何件の候補者が内覧に来たのか、どんな人が来たのか、何がダメで契約に至らなかったのか。「オーナーが知りたい情報が、管理会社から全然上がってこない」(西條氏)。さらに不動産屋の実店舗に行かなければ、部屋の内覧ができない日本の賃貸市場の商慣習にも、疑問が募った。

 これらの不便さは、鍵を開け閉めした瞬間にその情報をインターネットで飛ばしたり、特定のスマホに特定の時間だけ有効な開錠の権限を与えたりできるスマートロックで解決できるのではないか。そう考えた西條氏は、14年初めに、米国からスマートロックを取り寄せ、使ってみた。