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 「草刈機まさお」など、ダジャレの利いた製品名と大胆なデザインの農機で成長を続けている。中小企業ながら100カ国進出の目標を掲げ、世界各地の需要を刈り取る。

(日経ビジネス2018年10月8日号より転載)

 「草刈機まさお」「代表取締役社長 芝耕作」……。地味な存在と思われがちな農機業界で、ダジャレを利かせた名前の様々な製品を商品化しているのが、福岡県うきは市に本社を置く農機メーカーのキャニコムだ。

 9月下旬、同社を訪れると、派手なスーツに紫色のシャツを着た包行(かねゆき)均会長が笑顔で出迎えてくれた。名刺には「ネーミングの包行」と書かれている。「アルファベットや数字を並べた製品名では機能が分からない。特徴が伝わり、ついでにクスッと笑える名前がいい」と包行会長は話す。

「ぼやき」から開発アイデア

 キャニコムは草刈り機を中心に年間8500台の農機具を販売し、右肩上がりで成長。2017年12月期の売上高は60億円を超えた。独特なネーミングによる製品の知名度向上が好業績を支える理由の一つだが、同社の強みはそれだけではない。利用者の肉体的・精神的負担を減らす様々な工夫が農林業の従事者を中心に支持されている。

DATA
キャニコム
1955年設立
本社 福岡県うきは市吉井町福益
90-1
資本金 1億円
会長 包行 均
売上高 60億6000万円
(2017年12月期)
従業員数 233人
事業内容 草刈り作業車や運搬車の製造・販売
ニッチな農機市場を開拓する
●キャニコムの売上高推移

 包行家は筑後地方で刀鍛冶を代々営んできた。戦後、包行会長の父の代となり、農業用トレーラーに参入。しかし、競争環境が厳しく、販売は思うように伸びない。

 転機となったのは1978年。林業の現場を視察したときだった。当時は山道で馬が木材を運搬する時代。ある女性が「馬の世話をしなければならないので、嫁いでから30年間、一度も旅行に行ったことがない」とぼやいた。

 この女性の声にヒントを得て、狭い山道を行き来しやすい木材の運搬機を開発。累計2万台のヒットとなりキャニコムの礎を築いた。

 次に目を付けたのは、果樹園などでの下草刈り作業。下を向いて腰を曲げての重労働だった。そこで開発したのが「草刈機まさお」。車高が低く、ゴーカートのような感覚で運転でき、楽しく草刈りをできるようにした。ギアを工夫し、30度の険しい傾斜にも対応。特徴的なネーミングも相まって、年間販売が3000台を超すキャニコムの主力製品となった。