高精度ミラーに目を付けたのは2000年ごろ。津村氏の母校である大阪大学の研究室が、微粒子を超純水に混ぜて加工物に吹き付け、化学反応で表面を滑らかにする画期的な技術を開発したのだ。その製品開発がJテックコーポに委ねられた。

 この技術開発には理化学研究所(理研)も関わっていた。3者の共同開発によって放射光施設向けのミラーを実用化。完成させたミラーは、兵庫県にある理研の大型放射光施設「SPring-8」に160枚、隣接するX線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA(さくら)」に71枚を納入した。

 理研は世界屈指の高い評価を得ている研究所。そこに導入され、成果を上げたことで、Jテックコーポの知名度は高まった。14年以降は受注が急増し、世界に20カ所ある最先端の放射光施設に相次いで納入。物質の瞬時の動きを原子レベルのサイズで観察するXFEL施設向けでは、ほぼ100%のシェアがあるという。

阪大、理研との連携に強み

 参入障壁は高いが、一度入り込めば「仲間」と目されるのが学術・研究の世界。中国やブラジルなどでも新たな放射光施設の建設計画があり、15年6月期に3億円だったJテックコーポの売上高は、19年6月期に14億円に達する見通しだ。「高精度ミラーの市場は年率10%の成長が見込め、安定した受注が期待できる」と津村氏は自信を示す。

大学と連携し、成長を加速するジェイテックコーポレーション社長の津村尚史氏

 阪大の技術を生かし、理研での実績を味方にする。技術と販売の両面で学術・研究機関と上手に連携するのが、Jテックコーポの強みだ。“三位一体”モデルを成功させるカギはどこにあるのか。「研究サイドは技術をデータで実証し、我々はコスト効率の高い生産の仕組みをつくる。重要なのは技術論で対等に渡り合える人材だ」(津村氏)

 このためJテックコーポの社員は、約3分の1に当たる12人が博士号の取得者。高精度ミラーは受注から納入まで1年近くかかり、研究機関と対話を重ねて、信頼関係を構築することが欠かせない。「津村氏は誠実で堅実。優秀な研究者が彼を信じて集まっている」。同社と連携する阪大の山内和人教授はこう評価する。15年には大阪大学ベンチャーキャピタルから1億4000万円の出資を受け、関係性を強めてきた。

 もっとも放射光施設向けだけでは市場が限られる。津村氏の視線の先にあるのは宇宙や半導体などの分野だ。微細化が進む半導体製造装置、人工衛星に搭載する顕微鏡などに、高精度ミラーの利用を広げようとしている。18年2月には東証マザーズに上場し、約13億円の資金も調達。19年6月にはミラーの生産能力を2倍に引き上げ、市場の拡大に備える。

 学術・研究機関との連携は、祖業の自動培養装置などのライフサイエンス事業でも同じだ。ヒト細胞から軟骨をつくるプロジェクトでは横浜市立大学医学部などと連携。iPS細胞の大量培養技術でも阪大などと組む。「連携を生かして、ニッチな分野で革新を起こす」(津村氏)。日本では大学発の技術が事業化されないケースが目立つ。優れた技術を、連携によって実用化させ、日本から世界に羽ばたかせる──。津村氏の挑戦は終わらない。