銀行窓販を「実戦」で鍛える

 既存のつながりも強化している。もともと貯蓄性商品の窓口販売(窓販)でつながりの深い銀行との間でも独自の取り組みを展開している。

 「組み手行きまーす」。東京都内にある研修施設の一室。銀行の相談窓口を模した一角で制服を着た行員役と来店客役の2人が向かい合って座り、想定顧客とのやり取りを繰り返す。生保商品の窓販を中心に事業を展開する第一フロンティア生命保険が今年8月、銀行の担当者向けに開いた研修だ。

 生保商品の営業強化につながる研修は、銀行側に出向く形で他の大手生保でも実施している。フロンティア生命でも年間650回以上実施している。それに加えて今年からは、より密度の濃い研修を始めた。同社の商品を販売している銀行担当者に研修施設に足を運んでもらい、合宿で次々と想定顧客とのやり取りを繰り返す。大量の「対戦」をこなしていくことから「組み手」と呼んでいる。

 「商品特性など知識を覚えるだけの研修では、実際の『しゃべり』につながらない。実際のやり取りの中で何が足りないか、ほかの人はどうしているかを見て気づいてすぐに実践していただきたい」とフロンティア生命の岡田知彦・コンサルティング推進部長は言う。「組み手」では、地銀など参加した複数の金融機関の担当者が競い、盛り上がりを見せるという。新規の提携先だけではなく、既存取引先もこうして磁場に引き込んでいる。

 従来型の堅い生保の行動原理から抜け出ようとしている第一生命。16年10月には持ち株会社化し、さらに経営を変えた。「これで生保と異なる事業を傘下に入れやすくなる」(ある証券会社の生保担当アナリスト)と言われる。人口減時代も成長するためには変化を続けなければならない。

INTERVIEW
稲垣精二社長に聞く
つながりが新たな付加価値を作る
(写真=清水 真帆呂)

 今はいろいろな意味でつながりが大事な時代だ。「顧客とのつながり」「グループ会社間のつながり」「異業種とのコラボレーション(協業)」。そういうものが競争力になる時代に来ている。社長になって最初の中期経営計画(期間は2018年度から20年度までの3年間)を「CONNECT 2020」と名付けたのはそんな思いからだ。

 つながる相手の一つは企業だ。国内では日本調剤など異業種とも提携を広げている。これは海外のグループ企業でも始まっている。

 11年に子会社化したオーストラリアの生保TALでは、顧客が保険契約をすると同国のカンタス航空のマイレージを得られるといった提携をしている。これで飛行機に毎月何度も乗るような富裕層、ビジネスパーソンにより多くアクセスできるようになった。

 地方自治体との提携は、(がんや健康セミナーなどで)健康寿命の延伸を一緒にやっていくといった狙いがある。病気になったり、亡くなったりした際の経済的な保障がこれまでの保険だったが、顧客の求めるものは変わってきている。伝統的なProtection(保護)よりも、Prevention(予防)の方が大事だと考える人が次第に増えている。そういうところにつながりを作っていきたい。

 当社は今、グループ内に9つの生命保険会社を持っている。海外では米国にプロテクティブ、オーストラリアのTAL、そしてベトナム、インドなどアジアに子会社、関連会社がある。国内では第一生命と窓販の第一フロンティア生命、保険ショップなどで販売するネオファースト生命といった多様なチャネルを持っている。

 それぞれ独自の商品、サービスを持っているからグループ内外とのつながりを強めると、いろいろなサービスが提供できるようになり、第一生命グループとしての新たな付加価値を作り出せると考えている。

 その中には、技術面でのつながりもある。グループ外ではベンチャー企業とイノベーションラボを通じて連携を深め、新たな商品・サービス開発をしていくつもりだ。グループ内では、第一生命の顧客の健康診断や保険金支払いなどのビッグデータ分析にも乗り出している。健康診断の結果を提出すれば、健康状態に不安を抱えている人でも加入できる医療保険をネオファースト生命が開発したのもその一つだ。新たな価値を作る源泉として、つながりを大切にしていきたい。(談)