シリコンバレーでもつながる

 その拠点として今年4月から7月にかけて、東京と米シリコンバレーに「イノベーションラボ」を設けた。およそ生保のオフィスとは懸け離れたフリーアドレス型のラボで取り組むテーマは、「認知症など高齢化社会の課題解決」「病気にかかること・重症化することの予防」「新たな保険商品開発」「販売など顧客との接点の生産性向上」「先端技術」の5項目。

技術系ベンチャーの発掘や技術・事業開発を目的に第一生命が開設したイノベーションラボ。およそ生保のオフィスらしくない(写真=菊池 一郎)

 例えば、疾病の発症リスクを細かく分析できる検査装置を開発できれば、持病があっても死亡保険や医療保険に加入できるようになる。そんな課題を解決するために「ベンチャーなど協業相手を探したりして開発を進め、実証までするのがラボの役目だ」(中山新・イノベーションラボ部長)。

 外部の力を生かした新技術の活用は、本体を含めたグループ企業の社内業務効率化にも生かす。保険契約の際、現在は顧客が書類に必要事項を記入し、社員が手作業でコンピューターに入力する。それを別の社員が目視で間違いがないかなどチェックするといったように多数の人が時間を費やしている。OCR(光学式文字認識)とAIを組み合わせて、顧客が記入した書類を撮影すると自動でデジタルデータ化され、記入ミスの自動チェックまで完了できるシステムを目指している。

 「こうしたRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)技術の活用を個人保険事業で17年7月から始めており、今年4月から8つのチームを作り効率化に向けて本格展開し始めた」(前泊圭・第一生命事務企画部部長)という。当面の目標は22年ごろまでに2100人分の業務を効率化。浮いた人員を成長分野に振り向けながらさらに効率化を進める考えだ。

海外事業もネットワークで競争力高める

 第一生命の成長力を支えるもう一つの柱である海外部門。ここでもネットワークの強化が進んでいる。

 2007年1月のベトナム・バオミンCMG(現・第一生命ベトナム)の買収を皮切りに、タイ、オーストラリア、インドの地場生保に出資したり、地元銀行と共同で生保を設立したりしながら海外部門を拡大。15年2月には、米中堅生保、プロテクティブを約5822億円で買収して日米アジアに生保ネットワークを作り出した。

 この中で今、強化を図っているのがアジアだ。当初は海外の経営ノウハウ不足もあり、苦戦が続いた。個人で保険会社と契約した保険代理人が中心となり生保を販売するなど、日本と異なるビジネス構造に慣れていなかったためだ。

 対応するために08年末ごろから情報システム投資を強化。現地に合う商品を開発できる体制を作った。さらに保険代理人が他社に移りにくい仕組みを作り始めた。「農業などが本業で兼業で代理人として働く人が多い。保険の仕事での収入が不安定になるとやめてしまう。だから毎月対象を決めてその人の業績を上げるのを徹底して支援するようにした」。制度導入当時、第一生命ベトナムで教育や報酬規定などバックオフィス部門の責任者を務めた西山幸一氏は言う。

 営業成績が上がれば他社に移らない。そういう人を増やせば、定着する人はさらに増えていくというわけだ。

 「教育も当初は日本式で、商品知識や営業の話法などをみっちり教え込んでいたがついてこない。それより現地の幹部と一緒になって業績改善を手助けする方がやる気になってくれることが分かった」と西山氏。

第一生命ベトナムは社員や代理人の定着を図るため、様々なイベントなどを開催している

 試行錯誤の結果、第一生命ベトナムの販売力を示す収入保険料額は買収時の国内9位からトップ3に入るまで成長した。西山氏は第一生命が13年10月にインドネシアのパニン・ライフに出資、関連会社化(現パニン・第一ライフ)すると副社長として移り、ベトナムでのノウハウを展開し始めた。

 西山氏のようなアジアに精通した人材が域内の各国に駐在し、海外子会社の経営力は大きく上がった。これに合わせて日本の本社からもアジアへの投資を拡大。今年3月にはカンボジアに単独資本で生保を立ち上げ、さらにミャンマーでも同国政府の進出認可を待っている。

 ベトナムやインド子会社は銀行窓販にも強いことから、第一フロンティア生命が行う銀行などへの教育、支援の仕組みの移植も検討し始めている。アジア域内で現地に精通した人材が動き回り、現地幹部を含め日本との間で資本・戦略面などの結びつきを強める。海外グループ会社とのつながりは新たな段階を迎えている。