生保に対する消費者の意識も変わっている。収益源である死亡保険を手厚くするよりも、医療保険を重視するようになってきた。医療保険の保険料は一般的に死亡保険の数分の1程度だから、そのままでは営業効率の低下につながる。しかも日本の人口減は着実に進行している。中核商品である死亡保険などの対象となる生産年齢人口は1995年をピークに減少を続けている。2015年から40年までに約1900万人も減少する見通しだ。

新技術使って生保を変える

 そんな逆風の中、第一生命が「つながり力」を強化する狙いは2つある。まず顧客との接点を広げ、営業職員の販売力を再度引き上げること。もう一つは、多様なつながりの中から生保としての新たな付加価値を生み出すことだ。

 「将来まで続く人口減の中で、市場はどうなるか。そのために今何をしなければいけないか。それを考えてきた」(渡邉光一郎会長)結果だという。

 10年4月に大手生保としては初めて株式会社化し、東京証券取引所第1部に上場した第一生命。保険契約者が会社の所有者となる相互会社がほとんどの生保業界としては異例の動きだった。以後業績は拡大を続け、純利益は18年3月期に上場前(10年3月期)の6.5倍となる約3639億円に跳ね上がっている。相互会社である他の生保とは会計の仕組みが異なるものの、比較しやすい経常利益でみると18年3月期に約4720億円となり、日本生命(4718億円)でほぼ並んでいる。

 もっとも、主な押し上げ要因は15年2月に買収した米中堅保険会社、プロテクティブをはじめとした海外の保険会社が利益貢献してきたことだ。また、1990年代までの高金利時代に販売した商品の逆ざや(予定利率を実際の運用利回りが下回る状態)を解消するため多額の費用を計上してきた責任準備金の繰入額がここ3年で大幅に縮小したことが大きい。国内の稼ぐ力の再強化はなお課題のままだ。そこで注力しているのがつながりの拡大だ。

 冒頭で紹介した第一生命と日本調剤の提携に話を戻すと、これがスタートしたのは2017年2月のこと。日本調剤は計29店を改装し、同年5月から第一生命の子会社で店頭販売チャネルを主力にするネオファースト生命保険の保険商品を売り始めた。

 「調剤薬局にいろんな機能を加えることで地域の人たちが自身の健康チェックをする場にしたかった」(三津原庸介・日本調剤専務)という。

 一方の第一生命にとって、提携の取り組みは、保険販売の窓口を増やすためばかりではない。提携後まもなく始めたのは、スマートフォン(スマホ)アプリの機能連携だ。日本調剤が顧客向けに配信しているスマホアプリの機能を第一生命のスマホアプリでも利用できるようにしたのである。

 日本調剤のアプリは顧客が病院で処方された薬の履歴やその服用状況などをスマホで記録・閲覧できる。第一生命のアプリは、顧客が自分の受けた検診結果をスマホで撮影するだけで健康状態の確認や、がん、脳卒中、心筋梗塞など将来の病気発症リスクを判定してくれる。

 「日本調剤のアプリは、薬の処方箋を読み取るだけですぐにデータ化できる他社にない機能も持っている。手間をかけずに服薬の状況を長期にわたってチェックできる」(鎭目哲郎・第一生命営業企画部次長)。提携によって、第一生命のアプリ上で自分の健康状態と服薬の状況など幅広い面から健康管理ができるようになった。

 将来は新たな付加価値づくりも視野に入る。2つのアプリで集めた大量のデータを分析すれば、これまでなかった保険商品の開発につなげられる可能性がある。例えば、服薬の状況と疾病リスクの関係などから、医療保険の保障や保険料を設定するといったように、契約者それぞれにカスタマイズした保険商品を開発できる。

 個人情報の取り扱いといったハードルがあり、現在のところ日本調剤側は「全く考えていない」(三津原・日本調剤専務)としているが、様々な展開が考えられる。

 そうした技術と保険の融合で新たな事業やサービスを考える動きを強めている。ビッグデータやAI(人工知能)など、大手生保がこれまでほとんど付き合うことのなかった外部の技術系ベンチャーとのつながりだ。有望企業を発掘し、共同で新たな付加価値づくりをしていこうとしている。