「共通の財布」に利益還元

シェアハウスの「ボーダレスハウス」には外国人と日本人が半数ずつ住む

 だが、ビジネスレザーファクトリーはボーダレス・ジャパン傘下の約20事業のうちの一つにすぎない。同社のグループには他に、住まい探しが難しい外国人に住まいを提供するシェアハウス事業の「ボーダレスハウス」や、ミャンマーの貧しい農家と直接取引しハーブティーを販売する「AMOMA(アモーマ)」、難民の自立を支援しながら電子機器リサイクル事業を手掛ける「ピープルポート」など理念を持った会社が連なる。全体の売り上げは43.5億円、営業利益は12.6%を達成している。ボーダレス・ジャパンはいわば「社会課題解決を目指す起業家のプラットフォーム」(田口氏)だ。

「社会課題解決を目指す起業家のセーフティーネットでいたい」と語る田口社長(写真=菅 敏一)

 一般に貧困解決などは非営利組織が支援することが多い。だが寄付や補助金に頼る支援では、拡大はもちろん継続にも困難がつきもの。大学時代にアフリカの貧困の厳しさを知り、「社会課題解決を一生の仕事にする」と決意していた田口氏は、ビジネスで解決することを目指した。大学卒業後、金型部品製造・販売のミスミに入社。そこで新規事業を手掛けビジネス手腕を磨く。

 入社後2年で退職し、ミスミの同期だった鈴木雅剛副社長を誘い起業。家探しに困る外国人が、日本人と共に住み異文化を学べるシェアハウスを手掛け、事業を軌道に乗せる。

 だが、その後限界を感じる。「僕らが3年に1度起業したとしても、せいぜい一生で20の事業しかできない。これで社会は変わるのか」(鈴木氏)

 そこで考えついたのが、自社を社会起業家が集まる「プラットフォーム」にすることだった。そして起業を支援する仕組みを次々に立ち上げていく。

 その一つが、「恩送り」のシステムだ(左図を参照)。グループの各会社は、自己投資分を除いた利益を「共通の財布」に還元する。初期に設立した会社は売り上げが10億円近くに育っており、利益を還元できる。その利益を新会社の創業資金や、苦戦する会社の追加投資に回す。

 冒頭のビジネスレザーファクトリーは「利益を還元する側」の会社だが、現在同社の社長を務める原口瑛子氏は、「不公平だとは思わない。事業内容は違っても、社会課題を解決したいという気持ちは同じ。自社の利益が使われるのはうれしい」と胸を張る。

 さらに、金銭面以外でも起業家を支援する。起業家志望者はビジネスプランを提示して同社に入社。入社後は、既存の事業で修業するなどして2年以内に起業する。ボーダレス・ジャパンは起業家に3000万円を出資。マーケティングや経理、人事などの業務をサポートする仕組みも備えており、起業家は事業に集中できる。

社会起業家養成所をつくる

リユースショップの「ポストアンドポスト」。ママがひきつけられる店を心がける(写真=右上:菅 敏一)

 ボーダレスには起業家志望者が続々と集まる。「おしゃれなママ」をターゲットに、子ども服のリユースショップ「ポストアンドポスト」を手掛ける吉田照喜氏もその一人。「子どもが生まれたことをきっかけに、何十年も先のことを考えるようになった。ゴミが捨てられ続ける社会を変えたい」。すっきりとした店舗デザインと豊富な品ぞろえで他社と差別化。9月に2店目をオープンした。「ゴミ箱に代わるインフラになるのが目標」(吉田氏)

 田口氏はさらに前を見据える。10月には社会起業家養成所を開校予定だ。決して安易な起業を促しているわけではない。若手経営者らを講師に招きビジネスプランを考える体験を通して、起業ハードルを下げたい狙いがある。

 「1000の事業を生み出し、1000の社会課題を解決したい」──。20の事業ではまだ足りない。これからも挑戦は続く。