社会課題解決を目指す起業家が集まる会社がある。現在までに約20の事業を展開。貧困や環境破壊の解決など、“もうからない”はずのビジネスで成長を続ける。
(日経ビジネス2018年9月17日号より転載)

これ、お父さんへのプレゼントにしようかな」「この色もかわいいね」──。8月の週末の昼下がり。買い物客でにぎわっていたのは、横浜ランドマークプラザ内の店舗「ビジネスレザーファクトリー」だ。財布や名刺入れを中心とした革製品を扱う。2014年のブランド設立当初はネット通販のみだったが、今では全国に9店舗を構える。年間の売り上げも9億円に育った。
同ブランドを設立したのはボーダレス・ジャパン(東京・新宿)。田口一成社長は「バングラデシュ人と知り合い、現地を訪ねた。貧しい人々の雇用創出が必要だと感じたのが創業の原点」と語る。
本社 | 東京都新宿区市谷田町2-17 八重洲市谷ビル |
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資本金 | 1000万円 |
社長 | 田口一成 |
売上高 | 43億5000万円 (2018年2月期) |
従業員数 | 893人 |
事業内容 | 貧困や環境破壊など 社会課題解決ビジネス |
●ボーダレス・ジャパングループの売上高推移

その言葉通り、バングラデシュに製造工場を建設し、シングルマザーや障害を持った人など最も就職が困難な人を優先的に雇う。今では500人を超える人々が働き、託児所なども備える。文字も読めない人が多い中、「糸を切る担当」など作業工程を細かく切り出し、就労を可能にしている。
田口氏が革製品に注目したのは、バングラデシュの祭りでは牛が食べられる一方、皮は有効に活用されず、欧州に皮のまま売られている現状を知ったからだ。国内で最終製品にまで仕上げることで付加価値を高め、さらに雇用も生み出す道があると考えた。
ブランドの特徴は、ビジネス用に特化していること。「ビジネスシーンでは一目で高いと分かるような高級ブランドよりも、シンプルなデザインが求められる。新規参入組でも勝機がある」(田口氏)。エシカルマーケットのような特定の市場に頼るのではなく、適切な市場を探すのがボーダレス流だ。
さらに、商品企画から生産、販売までを自社で担うことで低価格も実現。名刺入れは2000~4000円程度だ。
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