多くの個人にとって最大の借金が住宅ローン。借り換えた方が得であることが多いが、借り換え率は低い。その借り換えを診断して最適化し、必要な手続きを代行することで、サービスの利用件数を伸ばしている。

(日経ビジネス2018年9月3日号より転載)

電話で借り換えを相談
住宅ローンの借り換えでどれぐらいのメリットが出るかを相談できる。相談は金融機関での勤務経験を持つスタッフなどが担当
(写真=北山 宏一)

 「いま住宅ローンを借り換えたら、支払総額が500万円低くなりますよ」。東京・大手町のビルにあるコールセンターでは、住宅ローンの借り換えに関する相談電話が鳴る。

 MFS(東京都千代田区)が提供するのは住宅ローンのマッチングサービスだ。顧客が抱える住宅ローンの内容を基に、他行に借り換えたら、ローンの支払額がいくら削減できるかを診断し、借り換えに必要な手続きを代行する。借り換えが成立したら、削減額の10%を成功報酬として受け取る。顧客にとっては、住宅ローンの削減効果を得られるだけでなく、金融機関との面倒な交渉なども行わずに済む。

 サービスを利用した40歳の会社員は「相談をした日から2カ月で銀行から承認がおりて、返済額を250万円も削減できた。打ち合わせは1回のみで、予想以上に楽だった」と話す。

 最近では、低金利により、返済期間が残り25年のローンを、35年ローンに借り換えても、総返済額が減り、手元により多くの現金を残せるといった事例も出ている。MFSの中山田明社長は「人生100年時代を迎え、金利の低い住宅ローンを活用し、老後のマネー計画を立てることもできる」と話す。

 中山田社長がMFSを立ち上げたきっかけは、2014年8月に住宅ローンを手掛けるSBIモーゲージ(現アルヒ)が米大手投資ファンドのカーライル・グループに売却されたことだった。当時、SBIモーゲージのCFO(最高財務責任者)として勤めていたが、買収後はCFOとしての地位は保証されず、親会社のSBI証券に戻れと指示を受ける可能性もあった。SBI証券に戻ってできる仕事はあるのか。そう考えたとき、起業を思いついた。

借り換えは米国では一般的

 事業内容はすぐに決まった。米国では一般的だった住宅ローンの借り換え代行サービスだ。日本では借り換えをしたくても、代行サービスがないため、個人の手間が大きい。ある調査では、住宅ローンで家を購入した人のうち、半数以上が借り換えを経験したことがない。「借り換え手続きを効率化する価値は大きい」と判断した。

中山田明社長は「金利が動けば、借り換えメリットは大きくなりやすい」と話す(写真=北山 宏一)

 14年10月に会社をスタート。借り換え業務を手掛けるためには、顧客から集めた個人情報をMFSが金融機関に渡すほか、金融機関から問い合わせが来た場合、MFSが受け答えをする体制を築く必要がある。そこで、金融機関の本店に、MFSが借り換え業務を請け負った場合、MFSを客の窓口とするよう、交渉した。

 しかし、問題が起きた。日本では前例のないサービスだったため、金融機関が個人情報をMFSに渡すことを拒んだ。「ビジネススキームに法令違反はない。実績を積み上げて、認めてもらうしかないと思った」(中山田社長)