サイトのリニューアルを巡っては出店者から「改めて商品の写真を撮り直す必要があり、手間も費用もかかる」と不満の声が聞かれるほか、「白が背景なのはアマゾンも同じで、まねのように感じる。三木谷さんはアマゾンを目指しているのか」という皮肉も出ている。サイトの刷新に限らず、競争力強化には、こうした「身内」からの反発も起き得るが、方針を貫けるのか。UBS証券の武田純人アナリストは「店舗への理解を求めながら、ビジネスモデルの違いによるアマゾンとの差を埋める必要がある」と指摘する。

 勝負を懸けた携帯事業。そのハードルも決して低くはない。

 ライバルとなる大手通信会社はすでに警戒レベルを上げている。「ソフトバンク・ヤフー連合」は連携を強化し、ソフトバンクの携帯電話契約者だけを対象にした優遇ポイントなどを始めた。業界関係者は「楽天がやろうとしている施策を先取りしている」とみる。スマホを使った決済や保険など金融との連携にはドコモやKDDIも着手している。

携帯事業失敗なら巨額損失

出店者に携帯参入の意義を強調する三木谷社長(上)。ビックカメラと提携、実店舗と連携強化しネット通販をテコ入れ(中)。千葉県流山市で大型物流センターを稼働予定(下)

 そもそも世界の主要国で3社を超える携帯事業者が生き残るのはまれだ。大規模な設備投資の継続がものをいうため参入障壁が高く、後発が割り込む余地がほとんどないからだ。日本でも05年にイー・アクセスが参入したが、計画通りに事業は拡大せず、12年にソフトバンクの傘下に入った。

 楽天は当初、通信網の整備などに充てるとする資金総額を「25年までに最大約6000億円」とはじきだしていた。直近の試算では「最新鋭の基盤技術を導入するため、もっと少ない投資で済みそうだ」(山田善久副社長)というが、多少減らせたとしても営業利益が17年12月期で1493億円の楽天にとって負担は小さくない。

 しかも楽天の場合、従来の参入企業よりも高い制約がある。総務省が今春、楽天や大手3社に携帯電話の電波を割り当てる上で、新たな条件を加えた。もし経営不振などで携帯事業を売却する場合、割り当てを受けた電波は返上しなければならないというものだ。

 以前の条件なら、万が一、撤退しても価値の高い電波を含めて事業を売れるので、一定の投資回収ができる可能性はあった。ソフトバンクがイー・アクセスを手に入れた際の買収額がおよそ1800億円と高騰したのは電波がセットになっていたからだ。しかし、今回はそうはいかない。電波を返上した携帯事業者の価値は大幅に減価する。失敗に終われば巨額の損失が見込まれる。

 楽天市場を創設して21年。国内の会員数は1億に迫り、売り上げは1兆円を射程に捉えるまでになった。「一つひとつのビジネスを見ると1位ではなくても周辺事業を拡大していくことで顧客が他に逃げることを防いできた」と、クレディ・スイス証券の米島慶一アナリストは評価する。

 19年4月には、楽天市場を中心とする「インターネットサービス」、金融事業の「フィンテック」、携帯電話事業の「モバイル」の3つの領域に整理し持ち株会社にぶら下がる形に再編する。新たな体制の下、楽天は再浮揚を図るが、ネット企業の「経済圏」を巡る争いが激しくなる中、「老舗」が存在感を高められるのか。勝負の時が近づいている。

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記事掲載当初、本文中4ページ目で「流通総額は1兆円を射程に捉えるまでになった」としていましたが、正しくは「売り上げは1兆円を射程に捉えるまでになった」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2018/11/01 12:10]