こうした戦術を深化させる上で、携帯事業は重要な手段になる。一般に携帯電話の解約率は非常に低い。既存大手の場合で年平均1%に満たない。月々数千円以上の料金にポイントを与えると、契約者はそれを使って楽天の各種サービスを利用するようになる。狙い通りの習慣付けができれば、顧客囲い込みには効果的だ。

 むろん、携帯電話の契約者が増えるだけで、ライバルに対抗できるわけではない。土台であるネット通販事業の機能強化も大きな課題にも向き合わねばならない。その一つが物流機能だ。

 「一気通貫型のメリットは本当に大きい」。7月のイベントで三木谷社長は自信ありげに語った。披露したのは20年をめどに展開する「ワンデリバリー構想」だ。

 多数の出店者を抱える楽天市場では、これまで商品の発送のほとんどを各出店者に任せてきた。そのため、顧客が複数の商品を買った場合、それぞれの店から別々に発送され、受け取るタイミングも別々になることが多い。配送料も基本的にそれぞれかかる。ワンデリバリーでは、こうした注文をまとめられ、顧客の手間が減るとともに、配送料も安くなる可能性があるという。

 構想実現への具体的な拠点が、千葉県流山市の常磐道流山インターチェンジから1kmほど離れた巨大物流センターだ。草が茂る空き地の横に、真新しい5階建ての巨大な建物が2棟そびえる。壁には外資系の物流施設管理運営会社のロゴマークがある。楽天は都心から約25kmに立地するこの施設のうち1棟をまるまる借り、新たな物流施設として年内に稼働を始める。

イメージ向上へ出店者に罰則も

 床面積は約8万m²で東京ドーム2つ分に迫る広さ。ここに出店者の商品を在庫として預かり、複数の出店者に同時に注文が入った場合、まとめて発送できるようにする。来年に大阪府枚方市でも新施設が稼働する予定で、今後、さらに物流拠点を増やしていく考えだ。それによって顧客の利便性を高めるとともに、人手不足でコスト増が見込まれる配送費の抑制にもつなげていく。

 楽天市場のサイトのイメージ向上にも着手した。大小さまざまな企業が出店する幅広さが楽天の特徴だったが、各店舗が思い思いの商品画像を掲載するなどしてきたため、サイトを訪れた顧客に「量販店のようなごちゃごちゃした印象」(ある出店者)を与えていた。

 そこで今年に入って新たなルールを設け、統一感を出そうとしている。商品画像の一定割合の面積以上に文字を載せるのは御法度になった。累積すると掲載制限などがある違反点数制度の適用も視野に入れる。「マーケットプレイスとしての多様性は大事だが、ユーザーにとっての商品の見やすさなどとバランスをとる」と廣瀬常務は“規制”に踏み切る理由を説明する。

 巻き返しに向け新たな手を打つ楽天だが、問題はどこまで徹底できるかだ。

 例えば物流の強化は過去にも取り組みがあった。10年に立ち上げた楽天物流はその一つ。自前での配送を増やそうとしたが、出店者の利用が伸び悩み、14年に撤退した経緯がある。

 今回のワンデリバリー構想に不可欠な大型物流センターは、賃料や機材のリース料として1施設あたり年間で数十億円単位の費用がかかる。武田和徳副社長は「(運賃の上昇もあり)当時とは状況が違う。チャレンジだが、絶対に成功させる」と不退転の覚悟を示す。