色あせる「楽天経済圏」構想

 三木谷社長が出店者の理解を求めるかのように語りかけたのは、莫大な投資を伴う新事業への懸念を少しでも払拭し、描く成長シナリオに理解を得たいからだ。その裏には、創業以来20年以上かけて育ててきた「経済圏」の失速に対する危機感がある。 

 日本興業銀行(現みずほ銀行)を辞めた三木谷社長らわずか6人が1997年に手探りで生み出した楽天市場。ネット普及の追い風を受けて、急成長を遂げた。並行して、2001年の旅行予約サービス「楽天トラベル」立ち上げや、クレジットカードの「楽天カード」の発行(05年)、ネット銀行事業への参入(09年)など、領域を拡大。楽天市場を核として大量の会員を囲い込み、独自の経済圏を作り上げてきた。

EC(電子商取引)と金融が両輪
●楽天の業績
(写真=左:共同通信、右:Bloomberg/Getty Images)

 それが今、曲がり角を迎えている。

 ネット通販市場は競争が激化している。ヤフーはグループのソフトバンクと連携を強めて猛追、海外からは世界一のネット通販の売り上げを誇るアマゾンが、配達の早さや豊富な品ぞろえを武器に国内市場を席巻する。日本貿易振興機構によるとアマゾンの16年の国内ネット通販シェアは20.2%。同20.1%の楽天を上回り首位に立つ。

 強敵は異業種からも現れている。携帯大手のドコモやKDDIはネット通販に攻め込む。年間1兆円規模の営業利益を稼ぎ出す両社は豊富な資金を元手にポイントを拡充し、膨大な数の携帯電話契約者を誘導する。楽天のお株を奪う経済圏構築を進めているのだ。

 大手ばかりではない。新興勢力も進境著しい。13年創業のメルカリは、スマホで中古品を売買できるサービスで急成長。アプリの累計ダウンロード数は17年末時点で1億件を突破。築いた顧客基盤をてこに決済など新サービスを次々と投入して、新たな「エコシステム」を作ろうと手を打っている。

 台頭する各社がそれぞれ独自の経済圏作りを展開している現状について、楽天の廣瀬研二常務執行役員は「他社もうちのビジネスモデルがもうかると分かっている」と戦略が似通ってきたことに警戒感を示す。包囲網が形成される中、楽天が目を付けたのが携帯電話なのだ。

 同社では現在、ネット通販や旅行予約、クレジットカードなど70を超えるサービスを提供している。それら共通の営業ツールが、サービスの利用額に応じて付与する「楽天スーパーポイント」だ。幅広い分野でポイントが使えることで、ロイヤルティー(忠誠心)を高め、各種サービスの継続利用を促してきた。

包囲網が着々と形成されている
●楽天と主なライバル企業