陸上やテニスなどの競技用車いすで国内シェア首位を誇り、日常用車いすの販売につなげている。高い技術力を生かし、2年後の東京パラリンピック(パラ五輪)で世界進出に弾みをつける。

(日経ビジネス2018年8月6日・13日号より転載)

軽量かつ頑丈な構造
剛性を保てる限界まで軽量化し、機動性を高めた。選手の体格に合わせてカスタマイズする。国枝慎吾選手も愛用(写真)
(写真=アフロ)

 「カモン!」。6月に開かれたテニスの全仏オープン車いすの部で優勝を決めた瞬間、国枝慎吾選手はコート上で喜びを爆発させた。優勝と同時に世界ランキング1位にも返り咲いた。試合後のインタビューでは「前回1位だった2年前の自分よりも強くなっている」と自信をみなぎらせた。

 国枝選手の復活劇を陰で支えたのはオーエックスエンジニアリング(千葉市)。国内の競技用車いす市場で5割近いシェアを握るトップメーカーだ。

 その評判は国内にとどまらない。車いす競技界で陸上の「女王」と呼ばれる米国のタチアナ・マクファデン選手に代表される世界のトップ選手もオーエックスの製品を採用する。同社はパラリンピック(パラ五輪)に初参戦した1996年のアトランタ大会以降、計122個のメダル獲得に貢献している。

競技用でブランド価値高める

DATA
オーエックスエンジニアリング
1988年設立
本社 千葉県千葉市若葉区中田町
2186-1
資本金 7500万円
社長 石井勝之
売上高 10億5085万円
(2017年9月期)
従業員数 40人
事業内容 車いすと自転車の開発・製造・販売
トップ選手がオーエックスの車いすを愛用
●パラリンピックでのメダル獲得数
注:このほか冬季大会で計34個獲得

 華々しい実績を残す競技用車いす事業について、石井勝之社長は「収支はトントンか、若干の赤字で推移している」と明かす。それでも問題視しない。競技用は「ブランド価値を高める広告宣伝の手段」と割り切っているからだ。

 オーエックスの2017年9月期の売上高は10億5085万円。車いす販売台数は2800台程度で、競技用の比率は1割にすぎない。大半を占める日常用の車いすで収益を追求し、会社全体で5%の経常利益率を実現している。

 そのビジネスモデルはイタリアの高級スポーツカーメーカー、フェラーリに通じるものがある。フェラーリは自動車レースの最高峰「F1」で好成績を収めてブランド価値を高め、市販車の販売につなげている。競技用車いすで注目を集め、日常用の販売を促進するオーエックスの戦略とも共通する。

 技術開発の手法も両社は似通っている。フェラーリはクラッチ操作なしで変速できる「セミオートマチックシステム」や、車両の横滑りを防ぐ装置、高出力のエンジンなどF1で勝つために開発してきた先端技術を転用することで市販車の性能を高めてきた。

 オーエックスも車いす競技で勝つために開発した技術を日常用に転用する。

 競技用車いすは俊敏に動けるよう、剛性を保ちながら、軽くすることが求められる。開発現場ではマグネシウムやスカンジウムなどの軽量素材を使い、壊れないギリギリの設計を追求する。