「今飛び込まないと乗り遅れる」

DATA
HEROZ
2009年4月設立
本社 東京都港区芝
5-31-17 PMO田町2階
資本金 2億円(2018年4月末時点)
CEO 林隆弘
売上高 11億5500万円
(2018年4月期)
従業員数 約40人
事業内容 AI(人工知能)を活用したインターネットサービスの企画・開発・運営
企業向けAIサービスで収益を拡大
●HEROZの業績推移

 それでも起業に踏み切ったのは「スマホ化はまたとないチャンス。今飛び込まないと流れに乗り遅れる」(林CEO)という思いが強かったからだ。

 起業した当初、手掛けたのは、スマホ向けのソーシャル(交流)アプリ。一定数のユーザーは集められたが、爆発的なヒットには結びつかなかった。「会社としては食べていけたが、世界を変えるようなものを生み出せていなかった」と林CEOは振り返る。

 強みが生かせる領域はどこなのか。模索する日々が続く中でたどり着いたのが「将棋」だった。林CEO自身、小学生時代から将棋に熱中し、有段者でもある。開発メンバーには、東京大学の将棋部出身で、現在もリードエンジニアとして活躍する山本一成氏など、将棋とAIに精通する人材が多かった。

 しかも当時はスマホに特化したオンライン将棋サービスはほとんどなかった。「これしかない」と林CEOは考えて、AI将棋ゲームの開発に注力。AIを活用する機能を盛り込んで誕生したのが将棋ウォーズだ。山本氏が開発したPonanzaの活躍で知名度も上がり、将棋ゲームのビジネスは軌道に乗っていった。そして18年4月には東証マザーズへの上場を果たした。

 18年4月期の売上高は11億5500万円。現在の主力は将棋ウォーズなどの一般消費者向けだが、今後、成長を期待するのは企業向けビジネスだ。

 富士キメラ総研によると、国内のAI市場は30年度に16年度比7.5倍の2兆250億円になる見通し。有望な市場だけにライバルも虎視眈々と商機を狙う。

 上場の狙いの一つには、企業向け事業の拡大がある。顧客となる大企業は他社と協業する際に「上場していること」を求めるケースも少なくない。実際、「上場で信用力が高まり、引き合いは増えた」と林CEOは自信を見せる。

 かつて米IBMはチェスAIでプロを破り、その後開発された同社のAI「ワトソン」は企業向け市場で確固たる地位を築いた。米グーグルも囲碁AIがプロを破り、企業向け市場で攻勢を強めている。

 「将棋以外でもAIで革命を起こし、世界を変えたい」。林CEOはこう強調する。将棋発のAIは、米国の巨人たちのように企業向けでも飛躍できるか。日本の伝統文化が鍛えた先端技術の底力が試されている。