尿の郵送検査で、体の健康状態をチェックする名古屋大学発ベンチャー。低価格や手軽さが評価され、美容と健康に対する意識が高い女性を中心に利用が拡大している。

(日経ビジネス2018年7月2日号より転載)

尿で健康状態をチェック
健康診断では測れない健康指標を尿で検査する。ユーザーは付属する黄色の試験管チューブに尿を入れて郵送するだけだ(写真=山下 裕之)

 顔にシワができて老けて見えないか、毛根が弱って薄毛になる恐れはないか──。高齢化で寿命が延びる中、健康ブームの勢いは止まらない。年齢を重ねても健康に、若々しく過ごしたいと意識する人が増えている。

 そんな中、名古屋大学発ベンチャーのヘルスケアシステムズが開発した、ある郵送検査が注目を集めている。名前は「ソイチェック」。累計で10万人以上が利用し、全国1500を超える医療機関などでも導入が進む。自宅で尿を試験管チューブに採取し、ポストに投函すれば約1週間後に検査結果が届くという手軽さがヒットにつながった。

 人気の火付け役は美しく健康でいたいと考える女性たちだ。ソイチェックが検査するのは尿中の「エクオール」。エクオールとは大豆イソフラボン類の一種で、納豆などの大豆製品を食べると、ヒトの腸内で作られる。美肌効果、更年期症状の緩和、骨密度の維持、メタボリックシンドロームの予防などに役立つとされ、男性の前立腺がん予防や育毛効果も注目される。

検査費用を約10分の1に

 ところが、体内でエクオールを作れるのは日本人の約半数。20代の女性では2割ほどにとどまるとされる。ソイチェックは、体に吸収されず尿中に排泄されたエクオールを測定するため、検査することで、自分がエクオールを作れるかどうか判断できる。

 この検査技術はもともと大学や企業など、研究機関での使用を想定していたが、社長の瀧本陽介氏は一般消費者への拡大も念頭に置いていた。

 瀧本氏は、学生時代にインドネシアの昆虫を研究した異色の人材。博士課程まで終えたが、研究者として働くことに疑問を感じ、卒業後は旅行会社などを経て、健康食品などの効果を調査する三重大学発のベンチャー企業に勤めた。その際、「健康食品を食べても人によってかなり効果にばらつきがあることに気づいた」と振り返る。

 健康食品をただ摂取して終わり、ではなく、自分に適していたか、体の状態の変化が分からなければ意味がない。そんな問題意識を持ち、当時交流のあった名古屋大学の教授と共同でヘルスケアシステムズを設立。手軽に体の状態を把握できる検査事業を開始した。

 従来の検査手法では、1回に約3万円の費用がかかっていた。だが、妊娠検査キットのような小さな板に検体である尿を垂らして測定する簡易検査技術を確立。1回の費用を3800円まで抑えたことで市場が拡大した。

 初回の検査で、エクオールが作れていなくても、大豆製品を継続して食べ続けるとエクオールの産生量が徐々に向上することもあるため、同検査が食生活を改善するきっかけにもなる。

 そのため、リピート需要も見込める価格に引き下げた。実際にソイチェックを使用した50代女性は「検査を機に豆乳を毎日飲むようになった。1年くらいしたらもう一度試してみたい」と話す。