旅行業界のガリバーJTBが、ネット販売などの攻勢を受けて、変革を迫られている。700店弱ある店舗網を再構築するほか、シニア移住の支援など旅行以外の事業育成も急ぐ。従業員3万人という巨大な組織の風土を変えるのが最も難しく、「大企業病」に悩む多くの企業にとって示唆がある。

(日経ビジネス2018年7月2日号より転載)

(写真=陶山 勉)

 3月下旬、入社10年目で人事関連の部署で働く竹澤尚子さんは4月1日の異動を命じられた。異動先は「外商部」。竹澤さんはどんな仕事なのか想像できなかった。

 無理もない。JTBが4月に実施した大規模な組織再編の一環として生まれた部署だからだ。「まさか、いきなりこのような仕事をすることになるとは思わなかった」と竹澤さんは振り返る。

 駅構内や街の中心地に店舗を構え、来店客へ旅行商品を販売するJTB。こうした個人客向けの販売は売上高全体の半分を占める。残りは企業の団体旅行といった法人向け事業などだ。

 今回の改革で高橋広行社長は「『待ちの営業』から『打って出る営業』へ」と強調する。「待ちの営業」とは従来の店頭接客のこと。対して「打って出る営業」の一例が外商部だ。

 イメージとしては百貨店の外商担当に近い。顧客の自宅や勤め先に出向いて旅行商品を販売する。竹澤さんは主に都内の企業を回っている法人営業担当者に同行。法人担当者が社員旅行の営業を終えた後、訪問先企業の役員などを対象に個人旅行を売り込む。

 竹澤さんが、外商部で初めて担当した顧客の要望は海外観光、それも仕事の出張と合わせて効率的に回りたいという内容だった。海外旅行を扱うのは初めてだったうえ、出張と絡めるという特殊なニーズで戸惑いは大きかった。

 竹澤さんの最前線での苦闘は、グループ約3万人の従業員を抱える巨大企業が、きしむ音を立てながら、方向転換しようとする姿を象徴している。