「物流業界の効率化はますます必要になる」と語る上ノ山慎哉代表

 00年代から急激に伸びたEC市場は、今後さらなる拡大が見込まれる。だが一方で、生産年齢人口は減少、労働力の不足が予想される。スタークスの創業は6年前。上ノ山慎哉代表取締役は「物流やその関連業界の人手不足は深刻化すると感じ、ここにビジネスチャンスがあると思った」と振り返る。倉庫会社やEC事業者の現場を訪ね、商品検索や注文、決済の分野でIT化が進む半面、伝票の手入力やエクセルでの在庫管理など、発送までの業務に手間をかけている現状を目の当たりにし、効率化の余地を確信した。

 15年に発送代行システムの提供を始めると、化粧品や食品などの定期購入者が多いEC事業者を中心に利用企業が伸び、これまでに600社以上が採用した。流通総額は初年度の50億円から485億円(見込み)へと一気に増えた。システムの導入で処理が自動的に行われるため、人的ミスによる誤出荷率の発生も業界平均の6分の1に改善されたという。今後は定期購入が少ない品を扱う企業への売り込みも目指す。

 システムの需要は順調に伸びたが、物流業界ではさらに深刻な人手不足が表面化した。荷物を運ぶドライバー不足による配送費の値上がりだ。物流コストの上昇はEC事業者だけでなく購入者の負担増加につながる。EC市場の成長にも悪影響を与えかねない。

AIで商品の需要予測

 新たに、問題解決のために着目したのがAI(人工知能)の力。これまでの運用で蓄積した購買データや人口分布、類似商品の売れ行きなどをAIが分析し、取扱商品の需要予測を導き出す。予測に基づいて関東、関西、九州にある14カ所の提携倉庫に購入者の注文前から商品を分散させることで倉庫と購入者間の配送距離を短くでき、配送料は安く、商品到着までの時間も短くできる。「各倉庫には他商品と一括で輸送する」(上ノ山代表)ことで、輸送費はトータルで1~2割抑えられるという。

 「クラウドロジ」と名付けられたこのサービスは、今年3月から提供を始めた。スタークス本社のパソコンには商品ごとの需要予測と実際の注文数を表す折れ線グラフがそれぞれ映り、各地にある倉庫の需給状況が示される。2本の線は若干の開きは見られるものの、ほぼ同じ形状だ。「予測の精度は約80%。90%を目指して改良を進めている」と上ノ山代表。提携倉庫は今後も増やしていく計画で「流通量から倉庫会社にどれくらいの仕事が渡せるかなどを分析し、他地域でも提携を検討していきたい」と前を向く。

 業績が順調なだけに、他社の新規参入も懸念されるが「これまでデータの蓄積ができているという先行者のメリットがある。どこにどれだけモノを送ればいいのか需要予測ができるアドバンテージには、他社は簡単には追いつけないだろう」。急成長した手法には確たる自信がある。EC市場の拡大予想を背景に、同社は自社システムが扱う商品の累計流通総額を22年までには1兆円にしたい考えだ。

 「世の中の悪い仕組みを変えていきたい」。上ノ山代表は何度もそう口にする。原点は新潟で過ごした小学生時代。「勉強が得意な子は勉強を、スポーツが得意な子はスポーツを」という校風で「一人ひとりの個性を生かす環境で、伸び伸び過ごせたのは、そのおかげ」と懐かしむ。その後の中学時代は皆が同じように行動するよう求められ、違和感を覚えた。「何事も生かすも殺すも仕組み次第と感じた。プラットフォーマーとしてEC事業者や倉庫会社、配送会社のみんなが力を発揮してもうかる仕組みをつくっていきたい」。今後も人手不足が懸念されている業界の危機を救い、ビジネスチャンスとできるか。若手経営者の手腕が試される。