顧客のニーズに先回りして応える姿勢の原点は、松村氏が起業を決意した若き頃にある。創業経営者300人に教えを請いに全国を回ったのだ。松下幸之助氏には半年間電話をかけ続け会ってもらったという。その中で彼らが口をそろえて言っていたことがある。「何事も自分のこととしてやれ」。コールセンターへの問い合わせの分析など、徹底した顧客目線はそのたまものだ。

 抜群の行動力と高いプロ意識で企業からの信頼を勝ち取り、今ではファナックや豊田自動織機など大手企業からも受注する。主要顧客がいる機械業界が好調なこともあり、同社の売り上げも順調に推移している。

 ペーパーレス化の時代にも素早く対応する。ウェブ上でマニュアルを作成できる「e-manual」というシステムが一例だ。これまでのマニュアル作成のノウハウを生かし、最適な目次やレイアウトを同社が事前に設定。企業の担当者は文字を打ち込むだけでマニュアルを作成することができる。初回はグレイステクノロジーが作成することも多いが、その後の更新は担当者自らができる仕組みだ。「e-manual」の売上高は今では紙のマニュアルの売上高をしのぐほどで、同社の成長を牽引する。

上場のため取引先6割削減

マニュアルを手に取る松村氏。「マニュアルにも『カイゼン』の発想を」と語る

 紙のマニュアル作成で培ったノウハウをITの時代にも生かしている同社だが、さらに次の時代も見据えAI(人工知能)を活用したマニュアルの開発も進める。現在、実証実験を進めるのが、眼鏡型のAIマニュアルだ。

 「レバーハンドルを握り、潤滑剤を注入してください」。機械のメンテナンスをする作業員の耳元で指示が飛ぶ。音は眼鏡に組み込まれたスピーカーから流れてくる。同時に、レンズ越しにハンドル部分が赤く表示され作業員を誘導。途中で疑問が湧いても大丈夫。「何回注入するんだっけ?」と聞けば、耳元のスピーカーから「5回です」と答えが返ってくる。

 AIに作業手順を覚え込ませたうえで、AR(拡張現実)と音声認識技術を使い、眼鏡をかけるだけで作業できる仕組みだ。マニュアルを読む必要がないので、作業時間の短縮やミスの減少といった効果を期待できる。

 同社は16年に東証マザーズに上場した。上場に向け大胆な手も打っていた。顧客企業の絞り込みだ。12年3月期に282社あった顧客を徐々に減らし、今では100社程度。長期にわたって取引できる企業に絞り、その中でも主力製品のマニュアルを請け負うことで、利益率を高めた。

 マザーズ上場からまだ1年半だが、松村氏はさらに前を見据える。「より信頼を得るためにも、さらに高いレベルに上場したい」。夢は広がり続ける。