設計者任せで分かりにくかった産業機械マニュアルの作成を代行。高い品質で信頼を勝ち取り成長する。ペーパーレスの時代を見据え、ウェブやAIを使ったマニュアルも開発する。

(日経ビジネス2018年4月23日号より転載)

 「御社のマニュアルを勉強させてください」──。2016年、マニュアル作成を手掛けるグレイステクノロジーの営業担当者は、大手工作機械メーカーA社から大量のマニュアルを預かった。そこからマニュアル作成チームが1カ月余りですべて添削し、さらに新たなマニュアルまで作成。総ページ数は2万4000ページにも上った。

 「当社はまだ知名度が低いので、まずは勉強としてマニュアルを預かり、勝手に添削する。これで実力を分かってもらえる」。松村幸治代表取締役は語る。

 A社も、返却されたマニュアルに仰天し、トップの命令で全社のマニュアルの刷新を依頼した。

日本のマニュアルはジョーク

 グレイステクノロジーの収益源は、産業機械のメンテナンスマニュアルだ。高い専門性が必要なため競合が少ないうえに、「機械の操作や設置に比べるとメンテナンスの作業工程は複雑で、マニュアルの分量も多くなり大型案件になりやすい」(松村氏)からだ。

DATA
グレイステクノロジー
2000年設立(1984年創業)
本社 東京都港区虎ノ門3-8-21
虎ノ門33森ビル
資本金 7777万円
社長 松村幸治
売上高 13億円
(2018年3月期)
従業員数 52人
事業内容 産業機械などのメンテナンスマニュアル作成
取引先の絞り込みなどで高い利益率
●売上高と営業利益率の推移

 とはいえ、なぜこのようなニッチな分野にビジネスチャンスがあると気づいたのか。きっかけは外国語大学を卒業し翻訳会社に勤務していた松村氏の体験だ。あるメーカーのマニュアルの翻訳を担当したとき、「英語に直す以前に、日本語の文章がめちゃくちゃだ」と驚いたという。実は松村氏は幼少期から読書や語学習得にのめりこみ、機械の分解も大好きだった。「ニューヨーク・タイムズに『日本の製品は一流だが、マニュアルはジョーク』と書かれたこともあるが、納得した」(松村氏)。

 多くの日本企業ではマニュアルに関して「専門部署がなく、製品の設計者が作成している」(大手工作機械メーカーB社)のが実情で、これが分かりづらさの一因とも指摘される。設計者は文章のプロではない。「5~6人の設計者が約2500時間かけて1000ページのマニュアルを作成する」(B社)など、現場にも負荷がかかっていた。

 グレイステクノロジーはこのマニュアル作成を丸ごと請け負う。文章を担当するスタッフの多くは元技術者。設計資料を読み込み、設計者への聞き取りを重ねることで手順を確認する。また、マニュアルの品質を高めるため、同社は作成工程を細分化。締め切りやゴールを厳密に設定している。受注から納品までは177枚のシートに記載された4500もの項目で管理する。

 作業員の使い勝手を考え、細かい内容も把握する。大手重工業メーカーのダム用発電エンジンのマニュアルを担当したときは10日にわたる作業すべてに密着し、作業員がどのような箇所で戸惑うのかなどを確認した。さらに、顧客企業のコールセンターに来た問い合わせも分析し、マニュアルに生かす。