安全・丈夫を売りにしてきた脚立の老舗メーカーがデザインにフォーカスした製品で躍進している。高級ブランドやホテルから引っ張りだこになっており、モノづくりを学ぼうと、若者も門をたたく。

(日経ビジネス2018年5月14日号より転載)

製品ごとに設計を最適化
鉄などの重い金具を極力使わないことで、従来製品と比べて30%の軽量化を実現

 「世界の直営店舗で採用したい。ただ、表面に革を貼ってもらえないか」。2017年春。米ニューヨークの展示会で、脚立メーカー、長谷川工業(大阪市)の長谷川泰正社長はこんな注文を受けた。相手はフランスの高級ブランド、ルイ・ヴィトンのパリ本社の責任者だった。

 長谷川工業が日本のヴィトン店舗に納入する脚立「ルカーノ」(上の写真)を見て、そのデザイン性にほれ込んだのだ。店舗では商品の上げ下ろしが頻繁にあり、脚立があると便利。ただ、高級ブランド店でアルミむき出しの無骨な脚立を使うのには抵抗があった。

世界のヴィトン直営店に導入

DATA
長谷川工業
1963年設立(1956年創業)
本社 大阪市西区江戸堀2-1-1
資本金 9000万円
社長 長谷川泰正
売上高 86億3300万円
(2017年5月期)
従業員数 約281人
事業内容 はしご、脚立の製造・販売
再び成長軌道に乗っている
●長谷川工業の売上高

 「安全性が脚立の命なので、滑りやすくなる革加工は難しい。ただ、納得してもらえるようなデザインの製品を開発します」。泰正社長はこう答えた。ルカーノはアルミ製だ。国内の塗装会社を回り、ヴィトンのイメージカラーである少しメタリックがかった茶色のコーティングができる業者を発掘。18年中に約3000台が世界のヴィトン直営店で使われる見込みだ。

 無骨な脚立と洗練されたデザイン。この取り合わせに注目したのは、恐らく長谷川工業が初めてだろう。同社の主力商品である脚立やはしごはバブル崩壊後の1990年代に市場が低迷。ホームセンターが増えたことで、他メーカーとの価格競争も激化した。長谷川工業は3期連続の赤字決算を余儀なくされた。

 2006年に父親から経営を引き継いだ泰正社長は、人口減などで国内市場が縮小していく状況を踏まえ、「脚立をインテリア家具のようにしたい」と提案。ルカーノの開発をスタートした。

 設計は外部のプロダクトデザイナーに一任。ただ、開発チームを率いた、泰正社長の弟である、長谷川義高副社長は2つの条件を出した。「ビスを見せないこと」と「自立すること」だ。「電球交換などの脚立が得意な作業でも机や椅子を使う人が多い。それなら、脚立をいつもリビングやダイニングに置けるようにしたいと考えた」と義高副社長は振り返る。ビスが露出するとどうしても機械的な雰囲気が出る、自立しないと気軽に置けない、というわけだ。