16年12月期に減益に沈んだ業績は全体的に盛り返している。17年12月期通期の売上高は7年前の約2倍に成長。営業増益に回復し、営業利益率も11%と高い水準を維持している。

 日本市場でマスクや生理用品が堅調だったほか、赤字が続いたインドが黒字化した。

 アジア太平洋全体で見ればシェアも順調に伸ばしている。例えば紙おむつのシェアは、2割程度とみられ、王者P&Gと肩を並べる位置にある。

 しかし、課題は中国だけではない。インドネシアなど、ユニ・チャームが先行開拓してきた東南アジア市場でも環境は激変している。同社のこれまでの成功の方程式は、P&Gが本格参入していないような国にいち早く足場を築く戦略。紙おむつや生理用品を使うという文化そのものを浸透させながら、市場を開拓してきたのだ。だがインドネシアでは13年に、P&Gが紙おむつの現地工場を建設して本格参入。ユニ・チャームも対抗して同年に工場を新設し、輸送費を抑えて価格競争力を高めた。

 ユーロモニターによれば、同国でのシェアはトップを維持するものの、じりじりと低下しているようだ。未開拓の市場では成功事例が多いユニ・チャームだが、後から追いかけられる競争市場の経験は少ない。

 高原社長が創業者である父、高原慶一朗氏から会社を継いだのは01年のこと。事業を不織布を使う生理用品や紙おむつ、マスクなどに絞り、積極的にリスクを取って海外市場を開拓して成功を収めてきた。中国やインドネシアで初めて「踊り場」を経験しており、ここから再浮上できるかどうかは大きな試練と言える。

 「懸念は、高原社長の経営判断に異を唱えられる人材の不足」と、みずほ証券の佐藤シニアアナリストは指摘する。中国市場で「日本製商品の需要が高まるという予測を、花王ができたわけだから、ユニ・チャームもそうした読みが社内にもあったとみられる。もし(高原社長と)経営を議論できる存在がいなければ、巨大企業が追いかけてきた国では難しい局面になりかねない」という。

大人向けおむつ国内外で有望

 懸念はあるものの、新たな市場を切り開くユニ・チャームの力は、これまでの成長が証明している。市場開拓を成功に導く秘訣はなにか。高原社長は「理性と感性と野性が大事」と話す。理性とは論理的な戦略。感性とは長年の積み上げた経験に基づく判断力だ。「重要なのは、野性も備えること。(新興国の開拓など)何が何でもやり遂げる野性的な情熱が必要なんです」(高原社長)。社長就任からここまで時価総額を約7倍に拡大した高原社長は、まだ56歳。同氏のリーダーシップに命運がかかっているのは間違いない。

きれいごとで終わらないESG投資
●ユニ・チャームが取り組んでいる消費者向けイベントと関連する商品
(左)インドで初潮教育をしている様子。毎年1万人を招いて指導をする
(右)ソーシャル・ウオーキングイベントに消費者と一緒に参加する高原社長(左、青いシャツ)
(写真=右:陶山 勉)

 もう一つ、同社が戦略上で重要視しているのがESG(環境、社会、企業統治)投資だ。同社の場合は、社会貢献や企業イメージ改善を目指すようなESG投資ではなく、市場の開拓に直結している。「当社は生理用品を成り立ちとした会社。製品がESG投資のようなもの」(高原社長)。女性の社会進出を後押しする生理用品や紙おむつといった製品を普及させることは、社会貢献にもつながる。新興国で市場を開拓しようと思えば、初潮教育や衛生管理の重要性などを啓蒙することが欠かせない。