紙やプラスチックの代わりとなる、軽量で耐水性と耐久性が高い新素材を開発した。石灰石が原料で、製造の際の環境への負荷が小さいという特徴を生かして、世界に挑戦する。

(日経ビジネス2018年5月7日号より転載)

石灰石が大変身
石灰石(写真後方)が原料の新素材「ライメックス」。紙のようにしなやかなシートは破れにくく、耐水性もある
(写真=竹井 俊晴)

 名刺、クリアファイル、茶碗、食品トレー。わずかに光沢を帯びたなめらかな手触りのこれらの製品は、いずれもベンチャーのTBM(東京・中央)が開発した新素材の「LIMEX(ライメックス)」でできている。

 ライメックスは「石灰石」を意味する「ライムストーン」から生まれた造語。原料は炭酸カルシウムが主成分の石灰石と樹脂だ。石灰石と混合する樹脂の種類や量を変えることで、紙のように薄く延ばしたり、立体的に成形したりできる。破れにくく、耐水性があり、軽量で耐久性にも優れ、用途は幅広い。

 一番の特徴は、製造時の環境負荷が少ないこと。通常、1トンの紙を作るためには、20本の木と100トンの水が必要だが、ライメックスの薄いシートの製造には木材や水が不要。プラスチックを製造する場合と比べても、石油の使用量を大幅に削減できるという。

 原料となる石灰石は世界中に大量に埋蔵されており、日本各地にも豊富に存在する。また、シート状のライメックスは再利用も可能で、使用後に回収してペレットにすれば、プラスチック代替製品として再加工できる。

 「森林や水資源の保護は世界的な重要なテーマ。日本発の新素材としてライメックスを世界中に発信したい」。TBMの山﨑敦義社長はこう意気込む。

数百年続く石の建造物に感銘

DATA
TBM
2011年設立
本社 東京都中央区銀座2-7-17 6F
資本金 60億7080万円
社長 山﨑敦義
売上高 10億円
(2019年3月期目標)
従業員数 93人
事業内容 石灰石を原料とした新素材「LIMEX」の開発、LIMEX製品の開発・製造・販売
発売から2年足らずで2000社突破
●ライメックスを使用した名刺の導入企業数

 いつか大きなことに挑戦したい──。大阪府岸和田市で中学校を卒業後、大工の見習いとして働いていた山﨑社長は、20歳で中古車販売会社を起業。それから10年後、人生の大きな転機を迎える。旅行で欧州を初めて訪れ、ロンドンやローマ、バルセロナ、パリを回り、何百年も前に建てられた石造りの建造物に感銘を受けたのだ。

 石造建築物のように、何百年も持続する可能性がある事業を世界中に展開したい──。

 そんな新たな野心を抱いた数年後、チャンスは巡ってきた。知人の紹介で、台湾の会社が手掛けていた石灰石と樹脂でできた「ストーンペーパー」に出合ったのだ。限られた森林資源を使わず、濡れても破れないという特徴に、山﨑氏は大きな可能性を感じた。すぐに台湾の会社と交渉し、2008年に日本で輸入販売を始めた。

 だが、販売は思っていた以上に苦戦を強いられた。製品の品質にばらつきがあり、通常の紙と比べて重く、価格も高いことがネックとなったのだ。