IoT(モノのインターネット化)の流れを受け注目が高まる半導体センサーの製造現場を「小型化」。世界唯一の接合技術を武器に、元電機大手社員らが苦難の末に立ち上げた企業に、今、注文が殺到している。
(日経ビジネス2018年4月30日号より転載)


温度に弱い素材でも、コネクテックジャパンの技術を使えば、熱で素材を変形させずに、半導体チップを接合できる(写真=佐々木 譲)
幅2.5m、奥行き0.8mの卓上に置かれた3台の装置。その上で、半導体チップが次々と基板に接合されていく──。半導体に詳しい読者であれば、この装置のすごさがお分かりだろう。なぜなら通常の半導体の組み立て装置はもっと大掛かりで、幅200m、奥行き100mもの巨大工場で生産されるからだ。
だがコネクテックジャパン(新潟県妙高市)が開発した半導体製造設備「デスクトップファクトリー」はその名の通り小型。工場立地に必要な面積は従来の5700分の1、投資費用も40分の1に削減することが可能になった。平田勝則社長は「装置は100ボルトの電源で駆動する。コンビニエンスストアの店舗ほどの広さの場所があれば、どこでも生産ができる。さらに多品種変量生産にも対応できる」と話す。
半導体製造の新時代切り開く
本社 | 新潟県妙高市工団町3-1 |
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資本金 | 13億6952万円 |
社長 | 平田勝則 |
売上高 | 7億円 (18年3月期見込み) |
従業員数 | 32人 |
事業内容 | 半導体製品の開発・後工程組み立て受託 |
●コネクテックジャパンの受託開発件数の推移

デスクトップファクトリーに盛り込まれた半導体製造技術「モンスターパック」は、半導体チップを基板に接合する方法自体を一新させた。ここ最近、半導体部品を小型化するために多く採用された手法は「フリップチップボンディング」と呼ばれ、圧力と260度の熱を加えて接合する。しかし、この手法だと熱や圧力に弱い素材を基板に使うことが難しい上、接合工程に必要な装置が大型となり、設備投資に多額の費用が必要だった。
モンスターパックは、印刷技術を応用し、独自開発した導電ペーストと硬化樹脂を使うことで、接合に必要な圧力を20分の1に抑え、温度は80度に低減。樹脂や繊維など、熱や圧力に弱い素材に、半導体チップを搭載することを可能にした。既に、厚さ数mmのフィルム素材に半導体チップを実装した品も試作している。
展示会に出れば、世界唯一の技術を一目見ようと、ブースには入りきれない客が押し寄せる。既にスポーツ衣料や時計メーカーなど、130もの企業から製品の開発生産を受託した。「IoTの流れでセンサーの需要が増える中、センサーをどうやって接合するかが重要になる。低温で接合できる当社のパッケージ実装技術へのニーズはより高まるだろう」(平田社長)
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