不動産を縮小し空港など事業運営を拡大
●セグメント別の税引き前利益の割合

 「ノウハウや人脈を蓄積した社員が新しい事業を生み出せるように、40歳までは5~6年ごとに担当事業を大きく変えさせる」と井上社長は言う。ただし、現場では優秀な人材はなかなか手放さないもの。そこでオリックスでは、社長が副部長以上の約300人の人事評価を直接担当する。適切なタイミングで他事業に配置できるようトップが判断できるようにするためだ。

 オリックスを今の大企業に育てた立役者は、現在、シニア・チェアマンの宮内義彦氏。1980年から30年以上にわたりCEO(最高経営責任者)を務めた。その宮内氏は言う。「常に日々変わり続けること、新しいことにチャレンジすることが企業の本能だ」

 もっとも、変わり続ける経営には弱点もある。現状の営業利益率は約12%と他のリース大手などに比べて高い水準を維持しているが、「選択と集中を進める経営に比べて、コストがかさみやすいと考えられ、株式市場で低く評価されている」(国内アナリスト)。

 井上社長は5~10年後の会社の姿について「新しい主力事業を3つ、4つ加える必要がある」と語る。コンセッションや地熱発電など、新たな事業領域を広げているオリックス。今後も会社の形を変えて、「オリックスって何の会社?」と世間に問われ続けるのかもしれない。

INTERVIEW
井上亮社長に聞く
社員の失敗は教訓、左遷はさせない
(写真=陶山 勉)

 変化しなくては生き残れないという焦りが、世界に類を見ないオリックスの経営スタイルにつながったと思います。

 リース業では、顧客から受け取るリース料率が競争激化で下がり、十分に利益を上げられない状況になっています。様々な事業に自ら進出することは必然の結果だったでしょう。

 金融事業を通じて、顧客企業が手掛ける事業の将来性や専門ノウハウについて分析してきました。その業界についての情報が集まってきたら、まず事業に出資する段階に入り、その次に自ら事業運営に乗り出すプロセスに入ります。

 事業ポートフォリオを変化させる中で、経営者にとって一番大事なことは、いかに早い段階で事業を仕込むかです。太陽光発電やコンセッションは有望分野で、多くの企業が関心を寄せていましたが、早い時期に事業化にこぎつけました。それによってノウハウを蓄積でき、今後の成功につなげられるとみています。

 有望な事業に関する情報を耳にした時、経営者としていかに早く判断できるか。それが当社の生命線です。他の大企業の場合、現場からの情報は、課長、部長、本部長、執行役と順番に上がってきますが、当社はそれを全部すっ飛ばして社長である私のところにメールや電話が来ますから。

 海外事業担当の役員をしていた頃、シンガポールの現場から不動産の案件について電話がかかってきて、20億円規模の案件を1時間で判断したことがあります。ほんの少しの時間差で、外資系の他社に先んじることができました。良い案件はすぐに無くなる。承認の判子を10個も押しながら稟議を通ってくる案件には良い案件はほとんどありません。

 経営判断のスピードを上げるためには、現場に自由に発想をさせて事業に取り組んでもらう。そして、失敗しても左遷させないことが大切です。失敗を責めていては、会社から誰もいなくなります。

 社員に自由にやらせる代わりに経営者は、事業を売却する判断をしなくてはなりません。自分の担当する仕事が無くなる社員の抵抗はものすごくありますが、成長性がピークを迎えたり超えたりした事業を売らないと、次の事業への挑戦が遅れてしまいます。

 失敗には多くのノウハウが詰まっています。1件の失敗は1000件の成功に相当すると思います。

 むしろリーマンショックを乗り越えてからは比較的順調に来ているため、危機のノウハウがどんどん薄まってきているのではないかと危機感を持っています。

 オリックスの社員の特徴は、やはりチャレンジ精神でしょうね。何でも挑戦してくるから面白いですよ。「こんな案件やめておけ」と言ったって、すんなり引き下がる人間はいません。そのタフさ加減はすごいですよ。

 このチャレンジ精神があるのは、4年前に当社の経営から退いた宮内義彦シニア・チェアマンが何十年もかけて会社の風土を築き上げたおかげですね。

(談)