新たな運営主体となる関西エアポートには、オリックスが40%出資するほか、フランスの空港運営大手バンシ・エアポートが40%、パナソニックなど関西系企業30社が残り20%を出資する。

関西エアポートの山谷佳之社長は、伊丹空港のターミナル改装の際に不動産事業の経験が役立ったと語る(写真=菅野 勝男)

 関西エアポートは、コンセッションによって16年4月から関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港の運営を開始。今回の神戸空港を合わせ、3空港を一体運営することになる。支払う運営権料は、年間約500億円、残り42年の契約で、総額2兆2000億円超にも及ぶ。

 「運営権料が巨額でリスクが高すぎる」。関空・伊丹の運営者選定の過程で、三井不動産などの連合の名前が挙がったが、最後まで手を挙げ続けたのはオリックス連合だけだった。

 安倍晋三政権が成長戦略の柱として強化してきたコンセッションは、オリックスの次なる成長を担う柱の一つだ。空港運営だけではない。17年10月にはフランスの水処理大手ヴェオリアなどと組み、浜松市の下水道処理施設の運営権を獲得した。コンセッションは今後、道路や博物館の運営などでも広がるとみられ、新たな案件獲得を狙う。

 2兆円を超えるプロジェクトのように、リスクをとって新たな事業を開拓するのは、創業以来、社内に根付いているオリックスの文化でもある。

 日綿実業(現双日)や三和銀行(現 三菱UFJ銀行)などの出資により、オリックスの前身であるオリエント・リースが発足したのは1964年。当時の競合には財閥系銀行など強固な後ろ盾をもつリース会社が多かった。顧客企業に物品をリースする従来の業態で正面対決を避けるため、オリックスは個人ローンやレンタカーなどに事業を展開する。井上社長は「リース業にとどまっていたら会社は無かった」と振り返る。

イチロー選手が登場するテレビCMでは「オリックスを知っている?」と視聴者に問いかける

 個人向けサービスが伸びていた89年にオリックスに社名変更した。プロ野球の阪急ブレーブス(現 オリックス・バファローズ)を買収したのもこの頃。横浜市の複合施設「みなとみらいセンタービル」など有力物件に投資し、リーマンショック前は不動産部門が会社の利益の3割を稼いだ。

 リース業から始まり、個人向け金融や不動産業へと多角化を進めてきたオリックス。しかし、不動産投資の比率を高めた反動で、リーマンショック後には赤字寸前まで業績が悪化する。

 保有不動産の売却を進め、リーマンショック時に約1兆2000億円だった不動産の保有額を6000億円程度まで削減した。6兆円を超えていた有利子負債も4兆円まで圧縮。財務体質を改善し、リスクをとって新分野へ挑戦できる体制を整えた。

 その筆頭がコンセッションだ。既存の不動産ビジネスとの親和性もある。空港なら、魅力的な施設に作り替え、客を呼び込むことで安定収益が見込める。

 関空、伊丹、神戸の3空港を運営する関西エアポートの社長は、オリックス出身の山谷佳之氏だ。2002年にオリックス信託銀行(現オリックス銀行)の社長に就任。その後、オリックス不動産社長などを歴任した。

 16年4月から運営開始した伊丹空港では、今年4月18日にターミナル内の商業エリアがオープンした。従来のターミナルでは出張利用の会社員などを対象とする飲食店や土産物店中心だったが、リニューアル後はガラリと変えた。子供向けに百貨店などに展開する玩具店のボーネルンドを空港に初めて誘致し、遊べる複合施設も併設した。家族連れを含めた幅広い世代の集客で「稼げる空港」を作る。その武器は商業施設運営で積んできた経験だ。「ベビーカーが通りやすいスロープの傾斜や駐車場からの動線まで、不動産開発のノウハウが生きた」(山谷社長)

 世界中から訪日客が到着する関空では、16年に日本初の設備を導入。手荷物検査場の「スマートレーン」だ。手荷物を入れたトレーのうち、再検査の必要があるものを自動的に別レーンに振り分けるのが特徴。後ろに並んだ搭乗者が、再検査している人を追い越すことができる。これによって保安検査にかかる時間を以前より約30%短縮した。「待ち時間を減らすことが施設の利便性に直結する」と、海外空港の例を見て山谷社長が導入を即決した。

 この2年間の成果は出つつある。関空ではインバウンド客増加も後押しして、17年の国際線旅客数は、民間経営に移る前の15年比で3割増の2113万人。外国人旅客は1432万人と成田空港(1551万人)に迫っている。「神戸を合わせた関西3空港合計で、世界の空港上位25位前後の年間5000万人の利用を目指す」と山谷社長は力を込める。