トヨタとの取引開始は、こうした集中と選択の成果といえる。プリウスの販売が伸びるにつれて両社の結びつきは強まり、10年には電池のリサイクル事業を共同で開始。その前には、当時トヨタ会長だった張富士夫相談役が新居浜市を訪れて、製錬施設などを視察した。そして12年、トヨタのPHV(プラグインハイブリッド車)向けに電池材料の供給を始め、両社の関係は株式を相互に取得するほどの密なものへと発展した。

巨額減損でも資源に積極投資

 臨界事故を契機とした集中と選択のもう一つの柱が、鉱石資源の権益取得だ。資源メジャーによる寡占化が進む中で、製錬会社としても鉱石を安定調達するには鉱山の権益を持たなければ生き残れないとの危機感が強い。03年には米アラスカ州で金鉱山に約400億円を投じることを決めたほか、10年には12年度までの3カ年で権益取得や設備投資など資源開発に約2000億円を投じると発表。その後も同様のペースで資源開発に投資を続けている。

 冒頭でも触れたように、住友金属鉱山は17年3月期に、同社が11年に住友商事と共同で45%の権益を取得したチリのシエラゴルダ銅鉱山で、操業が安定しなかったことなどから約800億円の減損損失を計上。その前の期にも銅価格の下落などを受けて、同鉱山で670億円の損失を計上しており、2期連続の最終赤字に転落した。

 そもそも、資源会社である以上、市況変動の業績への影響は避けられないが、多角化からの脱却を目指して非鉄事業に特化するほど、その振れ幅も大きくなる。製錬だけではなく、鉱山の権益確保に自ら乗り出せばなおさらだ。

 それでも住友金属鉱山は、市況による短期的な業績への悪影響はあっても、自前での資源獲得を追求し続ける構えだ。象徴的だったのが、16年2月の米国のモレンシー銅鉱山の権益の追加取得だ。シエラゴルダ銅鉱山での減損を発表したわずか10日後に、1000億円以上の投資を発表した。

 投資家からの評価は厳しいものだったが、中里社長は追加取得直後に「モレンシー鉱山の権益取得は、千載一遇の機会だった。投資家に何と言われようと、長期視点に立てば必要な投資だ」と語っている。実際、その後市況が好転したことで、今期はモレンシー鉱山が業績に大きく貢献し、連結純利益は850億円を見込んでいる。

新型電池で材料置換のリスクも

 00年から進めてきた構造改革は、20年近くの歳月を経てようやく一つの節目を迎えようとしている。昨年、非中核事業の最後の“大物”だった半導体材料の事業譲渡が完了した。同事業は当時、世界シェアの1割を握り、16年3月期の売上高は約400億円と材料事業の2割を占めていた。台湾企業への事業譲渡により捻出する経営資源はEVの電池材料事業などに再配分する。

 EV関連を中心とした材料事業を強化するのは、資源事業における業績変動リスクを抑えるという意味合いもある。材料事業の17年3月期の利益は約120億円で、資源事業の赤字を補う力はなかったが、今年は正極材の生産能力を月4550トンと前年比2.5倍に拡大するなどして、19年3月期には200億円の営業利益を見込む。阿部功・電池材料事業部長は、「電池開発ではスピードが大事。顧客からは、電池を作る段階で性能に直結する材料組成を分析できる技術を期待されている」と話す。