制度拡大の背景にあるのが、人手不足による人材獲得競争が激しくなっていること。優秀な人材が喉から手が出るほど欲しい各社は、新卒採用とは別に中途採用を拡大している。だが、「中途採用では、社風などが合うかどうかが分からない場合もある」(富士通人事本部の森川学シニアマネージャー)。

 そこで白羽の矢が立つのが出戻り組というわけだ。自己都合で退職しているとはいえ、「自身のキャリアアップなど向上心がある人材が多い」(江崎グリコグループ人事部の北山登部長)。さらに元上司などにヒアリングすれば、人柄などもあらかじめ知ることができる。「社風などを理解したうえで戻ることを決めているため、愛着を持って業務に取り組んでくれる可能性が高い」(富士通の森川シニアマネージャー)という期待もある。

転職の流れと変わらない

 先のエン・ジャパンの調査でも、出戻り社員を再雇用した理由で最も多いのが「即戦力を求めていたから」。次いで「人となりが分かっている」だった。企業は出戻り初日から社内ルールに精通した即戦力を獲得できることに魅力を感じているようだ。

退職後の期間を制限する例が多い
●転職や進学などの退職理由でも出戻りを認める各社の制度概要
会社名 設置 対象期間 年齢
制限
役職や待遇など
江崎グリコ 2008年 勤続3年以上、退職後10年以内 なし 退職後のキャリアで役職や待遇を決定
シャープ 2016年 勤続1年以上、退職後5年内の技術者。
早期退職制度活用者は応募不可
なし 退職後のキャリアで役職や待遇を決定
パナソニック 2016年 転職などの場合、通常の中途採用と同様に期間の制限なし なし 退職後のキャリアに応じて決定。育児や介護での退職者向けの制度も
富士通 2016年 勤続1年以上、退職後5年以内 なし 退職後のキャリアで役職や待遇を決定。退職後5年以上の場合、要相談
ワークスアプリケーションズ 2005年 勤続年数は規定なし、退職後3年以内 なし 退職時に対象者に「カムバック・パス」を付与。退職時と同待遇で出戻り可能
江崎グリコは2008年から退職者の出戻りを認める

 徐々にではあるが増えつつある出戻り社員。では、企業はどのようにして退職組にアプローチしているのか。

 実は出戻りといっても、退職組が踏む手続きは通常の転職活動とそう大きく変わらない。パナソニックや富士通では出戻り社員専用の応募ページを開設し、希望者が直接申し込めるようにしている。エントリーした後に人事などの面接を経て、出戻り社員として復帰する流れだ。

 待遇も「退職後のキャリアに応じて、役職や給与を設定する」(江崎グリコの北山部長)。通常の転職とほぼ同じだ。

 とはいえ、企業が出戻り社員に求めるのは、先に紹介したように優秀かつ社内ルールに精通した人材。目的の人材を獲得するために、通常の転職にはない項目を設けている企業が多い。

 代表的なのが期限だ。入社してからの勤続年数と退職後の年数を設けている。富士通では、「勤続1年以上、退職後5年以内」、江崎グリコは「勤続3年以上、辞めて10年以内」といった具合だ。その理由について、富士通の森川シニアマネージャーは、「辞めてから長期間が経過すれば、組織が大きく変わっていることもあり(出戻り社員としての)活躍が難しくなる」と説明する。

 期限以上に企業がシビアに見ているのが能力だ。退職後に別の企業などでどのような経験を積んだかが復帰の重要な条件。江崎グリコの北山部長は、「辞めている間に何らかの付加価値がなければ復職は難しい。実際に応募があって不採用にしたこともある」と明かす。出戻り制度があるからといって、「転職後に困ったときは以前の勤務先が助けてくれる」という甘い考えは通用しない。