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混雑突くテロ対策、人手不足との戦いに

 五輪のもう一つの重要課題がテロ対策だ。世界が注目する大イベントは、自らの存在を広く知らしめたいテロリストにとって絶好のアピールの場。警察や民間警備会社が対策を急ぐなか、元外交官で現在はキヤノングローバル戦略研究所で研究主幹を務める宮家邦彦氏は警鐘を鳴らす。「主催者が守りたいもの、テロリストが攻撃したいものにズレが生じるリスクがある」

 懸念を抱いたきっかけは、宮家氏が有志を募って2017年秋に実施したロールプレイングだ。参加したのは現役官僚や中東の専門家・学者など、テロ対策の実務に関わりうる立場の「プロ」たち約50人。ロールプレイングでは攻撃側として宗教過激派、テロ国家工作員、日本人愉快犯の3チーム、守備側として政府関係者チームを編成。各々の立場からどこを攻めるか、どこを守るかの作戦立案を競い合った。

「テロ対象」の認識にズレが生じる恐れ
●宮家氏の政策シミュレーションの結果のイメージ
セコムが開発する巡回監視ロボットは、アームを伸ばすことで無人の金属探知もできるように

 一昼夜に及ぶチームでの議論を経て、守備側が警備に多くのリソースを配分したのは競技場や国会議事堂、中央省庁、原子力発電所。いずれも攻撃されれば大会が中止に追い込まれる重要施設だった。

 攻撃側は対象が分かれた。テロ国家工作員チームが政府機関や金融機関に狙いを定めたのに対し、宗教過激派は五輪と直接は関係しない商業施設やマスコミ、愉快犯はIT企業などを攻撃対象とした。「重要施設は警備も厳重。テロリストは攻撃の費用対効果が悪いと考えた」(宮家氏)

 この結果が示唆するのは、一口にテロリストといっても動機や手段は多様化しており、守るべき対象が広がっている現実。警備員がいくらいても足りない状況だ。

 そこで警備大手のセコムは、自律走行する巡回監視ロボットを開発している。18年度をめどに実用化を目指す「セコムロボットX2」は複数のセンサーを搭載。警備員の代わりに空港や商業施設の夜間見回りをする。アームの先には金属探知機を備え、不審物に爆破装置が入っていないかも調べられる。警備業界でも人手不足は深刻。セコムは大会後も見据えながら、先端技術の導入を進める考えだ。