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混雑解消がビジネスに

 何事も、課題にはビジネスチャンスが潜むもの。五輪を機に市場拡大を狙う企業も出てきた。その一例が月間4800万人の利用者を誇る経路検索サービス大手、ナビタイムジャパンだ。

JTBが横浜の山下ふ頭に接岸させる予定のホテルシップ「サン・プリンセス」。ホテルを新設しなくても宿泊客を収容できるため、短期間に需要が集中する大規模イベントでも活用できそうだ(写真=プリンセス・クルーズ提供)
ナビタイムのスマホアプリは「時間優先」「運賃優先」などに加えて、「混雑回避優先」モードを搭載し始めた

 同社がアピールするのはスマートフォンアプリの活用。17年に提供を始めた混雑回避を優先する検索モードを使えば、観戦客を分散できるという。国交省の鉄道利用調査に同社の実地調査、乗り換え検索エンジンをかけあわせ、混雑具合を予測。多少時間がかかっても車内が空いているルートを提示する。

 将来的には数時間後の混雑を見越して、アプリ利用者の属性によって最適な検索結果を出し分け、利用者の集団を誘導することも技術的に可能という。大西啓介社長は「組織委や東京都から話があれば、共同でアプリを開発するなど連携もできる」と秋波を送る。

 宿泊ではすでに具体的に動き出した計画もある。大型クルーズ船をチャーターして宿泊施設として利用する、JTBの「ホテルシップ」だ。スイートルームから窓なしのツインまで1000室超を備え、20年7月23日から8月9日までの18泊、横浜・山下ふ頭に停泊させる。船上にはエンターテインメント施設やショーの観覧ステージも備えており、泊まる体験そのものも含めた商品として売り出す。

 もともとは五輪開催時の一時的な宿泊需要の増大に対応する狙いのホテルシップ。だが、見据えているのは五輪の先だ。JTB法人事業本部の鈴木章敬・事業推進担当部長は「国際会議や展示会など大型イベントの誘致などで一時的・局所的に宿泊需要が高まる機会は五輪以外にもある。政府が観光立国を目指すなかで、新たな事業モデルとして確立させたい」と話す。

 政府は30年に訪日外国人旅行者数を、15年の約3倍に当たる6000万人へと引き上げる目標を掲げている。海外からの玄関口となる東京を、混雑によるストレスを感じない都市にできるか。その第一歩を踏み出す機会として東京五輪を生かすべきだ。