例えば、店舗で700円以上買い物した際に引ける、飲料や菓子などの商品が当たるキャンペーンくじ。ローソンは従来は幅広い年齢層を狙っていたが、今夏、人気アイドルグループの「欅坂46」とタイアップしたくじを始めた。初日である8月1日には、メンバーのステッカーがもらえるイベントが東京・渋谷で開かれ、炎天下の屋外にもかかわらず数多くの若者が会場で列をなしていた。

 人気アイドルとはいえ、コンビニの客層の6割を占める40代以上には、全く関心を示さない人も多い。はずれでも、欅坂メンバーの写真入りカードがもらえるが、「興味がないのでどうでもいい」(東京都内に住む44歳の会社員)という人は少なくない。

 それでもローソンがこうしたキャンペーンを展開するのは、ニッチでも熱心なファンが多い特定のコミュニティーに訴えかけた方が、若者への訴求効果が高いと考えているからだ。

 ニッチを狙うローソンのマーケティングはより先鋭化している。9月初旬には、店頭のポスターやのぼりが欅坂46からアニメキャラクターに変わった。軍艦を擬人化したゲーム「艦隊これくしょん」との共同企画だ。さらにその1週間後には、妖怪アニメ「夏目友人帳」とのキャンペーンを開始。特定のコミュニティーを狙う販促を“連打”し、若者の消費を喚起しようとする。

ローソンは様々なアニメやアイドルなどと相次いでタイアップして若者世代を狙う(写真=Mario Tama/Getty Images)

分散するコミュニティーを狙う

 リーマンショックが起きた10年前にスマホが登場。多くの若者はスマホ経由でSNS(交流サイト)を頻繁に利用するようになった。同じ趣味を持つ人同士の多様なコミュニティーも増殖。18~24歳では33%、25~39歳でも23%が、「SNSで話題になったモノをよく買う」という調査結果もあるほどだ。この比率は40~64歳では7%にすぎない。

 テレビコマーシャルのようなマス向けの宣伝が、若者に届きにくくなるのは避けられない。矢継ぎ早に展開されるコンビニのタイアップ企画は、リーマンショック後に台頭する分散された若者コミュニティーを捉えるために生まれた手法といえる。

 試行錯誤するのはコンビニだけではない。学生が中心の通学定期の所有者が減っている西武鉄道。少子化や沿線にある大学の都心移転などが響き、若者の獲得が課題になっている。

 そこで目を付けたのがオリジナルアニメ。3月には埼玉県秩父市周辺を舞台に、ある令嬢が、幼少期に出会った少年を探しに、思い出の場所を巡るラブストーリー「ちちぶでぶちち」の配信を開始した。西武沿線の魅力をアニメの力で若者に訴えかける戦略だ。

 西武線沿線にはアニメ制作会社や、手塚治虫や藤子不二雄など有名漫画家が住んでいたトキワ荘といった、アニメにゆかりのある地も多い。アニメ会社などと一緒になって、キャラクターのデザインをあしらった車両を走らせるなど、これまでに多くの作品とタイアップしている。

 「定期券以外の収入獲得のため、『西武線=アニメ』というブランディング強化を進める」(西武鉄道)という。2月にアニメ「銀魂」とタイアップした企画では「銀魂目当てで西武線来いよおぉぉぉ!!」という絶叫調のキャンペーンも展開。なりふり構わない姿勢で若者を引き付けようとする。