食品機械市場に異業種企業の参入が相次いでいる。得意の「技」を人手不足で需要が高まる食品機械で生かせるからだ。調理をする機械だけに、切ったり、つかんだり、包んだりと、必要な技術の幅は広い。

(日経ビジネス2018年8月27日号より転載)

WPC処理をすると粉が網に残らなくなり歩留まりが上がる(写真=竹井 俊晴)

 まずは上の写真を見てほしい。ステンレス製のふるいを使って、小麦粉をふるい落としている様子だ。左側の網の方からは小麦粉がスルスルと落ちてくるが、右側では目詰まりしているように見える。

 この差を生むのが、左側の網目に施した細工。「WPC処理」と呼ばれる。直径10マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル程度の超微小なセラミックス粒子を打ち付け、ステンレス表面に無数の微細なへこみを作り出した。この効果で、ステンレス表面の摩擦が少なくなり、小麦粉の粉も滑るように落ちていくのだ。

表面につけた目では見えない微細な凹凸が滑りをよくする。ギアなどに使われる処理方法を応用した(写真=竹井 俊晴)

 WPCは「ワイド・ピーニング・アンド・クリーニング(幅広く打ち付けて清掃する)」の頭文字で、磨耗を嫌う二輪車や四輪車のエンジン部品、ギア(歯車)、切削工具などで使われる技術だ。モノづくりの基盤を支えてきたこの技術を、食品業界向けに応用したのが、金属部品の受託加工を手掛ける不二WPC(神奈川県相模原市)だ。 

 同社が畑違いの食品業界に参入したきっかけは、2014年に世の中を騒がせた「事件」だった。大手食品メーカーのカップ焼きそばに虫が混入していることが発覚し、自主回収に追い込まれた一件だ。食品業界では生産工程内での異物対策をそれまで以上に強化するようになった。

食品機械の需要が伸びている
●国内販売額の推移
出所:日本食品機械工業会

 冒頭のふるいのように、原材料に触れる道具の滑りがいいと、道具に残って結局捨てる無駄な材料を減らせる。このため、滑りをよくするフッ素コーティング加工をした道具を生産ラインで使っている食品メーカーは多い。だが、これだとコーティングした物質が剝がれて異物になり、食品に混入するリスクがある。下平英二社長はここにWPC処理の商機を見いだした。

 もともとエンジン部品などの受託加工を得意としてきた不二WPCに、食品業界へのコネはなかった。だが、「コーティングをしなくても滑りをよくする方法があります」と食品業界に飛び込み営業をかけてみた。すると、「高い確率で商談につながった」(下平社長)。18年12月期は売上高の4割弱を食品業界向けの加工事業が占める見込みだ。