自動車など完成品メーカーを頂点とするピラミッド型の産業構造が崩れ始めている。技術や品質に磨きをかけ、リスクをいとわず新たな顧客開拓に挑む「下請け企業」の増加が背景だ。仕事を請け負うだけの下請けから、対等な関係へ―。「脱・下請け」の成功の条件を探る。

(日経ビジネス2018年8月20日号より転載)

ハーモニック・ドライブ・システムズの穂高工場(長野県安曇野市)では、減速機の組み立て工程にロボットを導入したことで生産効率を高め、需要の増加に対応する

 長野県安曇野市。減速機メーカーのハーモニック・ドライブ・システムズの穂高工場がフル稼働を続けている。減速機は産業用ロボットのアーム(腕)の動きを高精度に調節する基幹部品。国内外の生産ラインの自動化ニーズの高まりで、産業用ロボットメーカーから注文が殺到している。同社の減速機の価格は競合よりも1割は高いとされるが、それでも顧客はハーモニックを頼る。

 「壊れる、納期が遅い。そう言われて、当時の主力顧客だった自動車メーカーから相手にされなかった時期もあった」と長井啓社長は振り返る。だが、今は違う。注文を受けてからの納期は、従来の日数の倍以上かかっているにもかかわらず、顧客はついてくる。自動車向け部品で培った技術を基に、顧客の要望を聞きながら、音や振動を抑える減速機を実現。これがなければ、産業用ロボットを組み立てられないといわれるまで性能を高めてきたことが大きい。かつてのような顧客が「主」で、ハーモニックは「従」という取引関係は変わった。

 同じような取引関係の変化は工作機械業界でも見られる。「納期の督促にいくと、かえって納期が遅くなる」。業界内でこう語られるのが、工作機械の切削精度を左右するリニアガイドと呼ばれる部品だ。

 この基幹部品で高いシェアを握るのがTHKだ。ある地方の工作機械メーカーの経営者は「少し前は納期が遅れると、営業部長がわびの電話をかけてきたのに、今はこちらが電話をかけても、出ることすらない。完全に関係性が変わった」と嘆く。少しでも納期を早めてもらおうと、THKに支払う価格を引き上げた企業もあるほどだという。

 自動車や家電、機械といった最終製品を手掛けるメーカーを頂点とするピラミッド型の産業構造で成り立ってきた日本の製造業。最終製品メーカーが1次下請けに当たる部品メーカーに部品を発注し、さらにその部品メーカーが2次下請けに部品製造に必要な金型やネジといったパーツを発注する。ピラミッドの下に位置する企業は、その上の取引先から値切られたり、短納期を求められたりしながらも、仕事を確保するために何とか耐える。そうした積み重ねで、日本製品は高い品質と価格競争力を発揮して世界市場で高い評価を得てきた。